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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)3455号の3 判決 1996年12月24日

兵庫県尼崎市杭瀬南新町三丁目二番一号

原告

大同鋼板株式会社

右代表者代表取締役

永野辰雄

右訴訟代理人弁護士

牛田利治

白波瀬文夫

岩谷敏昭

右輔佐人弁理士

石田長七

西川惠清

森厚夫

奥田和雄

大阪市西淀川区百島二丁目一番一〇号

被告

ダイト工業株式会社

右代表者代表取締役

澤田實

右訴訟代理人弁護士

筒井豊

右輔佐人弁理士

鈴江孝一

鈴江正二

主文

一  被告は原告に対し、金七六万八六〇〇円及びこれに対する平成三年五月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その一を被告の、その余を原告の各負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は、別紙目録(三)記載の断熱壁パネル及び別紙目録(四)記載の断熱屋根パネルを製造、販売してはならない。

二  被告は、その占有にかかる前項記載の断熱壁パネル及び断熱屋根パネルを廃棄せよ。

三  被告は、別紙目録(八)の1記載の断熱材の製造装置を除却せよ。

四  被告は、原告に対し、金四一七万九〇〇〇円及びこれに対する平成三年五月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  第四項につき仮執行の宣言

第二  事案の概要

一  事実関係

1  原告は、鋼板及び亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、塗装鋼板等の各種表面処理鋼板の製造、加工及び販売並びに建築材料の製造、加工及び販売等を業とする会社であり(争いがない。)、建築材料として、昭和四六年以降別紙目録(一)記載の断熱壁パネルを「イソバンド」の名称で製造、販売し、昭和五六年以降別紙目録(二)記載の断熱屋根パネルを「イソダッハ」の名称で製造、販売している(証人藤井治城。以下、これらの商品をそれぞれ単に「イソバンド」、「イソダッハ」といい、合わせて「原告商品」という。)。

2  被告は、金属板塗装加工、断熱材加工を業とする会社であるが、平成二年九月頃から、別紙目録(三)記載の断熱壁パネルを「サンマリン」の名称で、別紙目録(四)記載の断熱屋根パネルを「サンホルン」の名称で製造、販売している(別紙目録(三)中に「断熱壁パネルの製品巾W1は九二七mm、働き巾W2は九一〇mm」とある点を除き、争いがない。乙第一二号証及び弁論の全趣旨によれば、右の製品巾W1は九一七mm、働き巾W2は九〇〇mmと認められる。以下、これらの商品をそれぞれ単に「サンマリン」、「サンホルン」といい、合わせて「被告商品」という。)。

二  請求

1  不正競争防止法に基づく請求

原告は、原告商品の形態は原告の商品であることを示す表示としていわゆる周知性を取得しているところ、被告商品の形態は原告商品の形態と同一であり、その製造、販売によって原告商品と混同を生じさせると主張して、被告に対し、不正競争防止法二条一項一号、三条一項、二項に基づき、被告商品の製造、販売の停止(請求の趣旨第一項)及び被告商品の廃棄(同第二項)、被告商品の製造に供した別紙目録(八)の1記載の断熱材の製造装置の除却(同第三項)を求めるとともに、同法四条に基づき、原告の被った損害四一七万九〇〇〇円及びこれに対する平成三年五月一八日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払い(同第四項)を求める。

2  不法行為に基づく請求(請求の趣旨第四項の損害賠償請求についての予備的請求)

原告は、被告商品の形態は原告商品の形態を酷似的に模倣したものとしてその販売につき不法行為が成立すると主張して、前同額の損害賠償を請求する。

三  争点

1  原告商品の形態は商品表示性を取得し、周知性を獲得しているか。

2  被告商品の形態は原告商品の形態と同一又は類似するものであり、その製造、販売によって原告商品との混同を生じさせるか。

3  被告商品の形態は原告商品の形態を酷似的に模倣したものであり、その販売につき不法行為が成立するか。

4  被告が損害賠償責任を負う場合に、原告に賠償すべき損害の額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(原告商品の形態は商品表示性を取得し、周知性を獲得しているか)

【原告の主張】

原告商品の形態は、イソバンドが昭和四七年頃に、イソダッハが昭和五八年に原告の商品であることを示す商品表示性を取得し、これが周知性を獲得している。

1 原告商品の形態の特徴

(一) イソバンド

(1) イソバンド(別紙目録(一))の形態の特徴は、次のとおりである。

二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され、両端に嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成され、

右嵌合凸部5と嵌合凹部6は各一個とされている形状の断熱壁パネル

(2) 技術的特徴をも含めていえば、イソバンドは、「二枚の金属板外皮のサンドイッチパネルの芯材に硬質のウレタンフオームなどの発泡樹脂を使用しているもの」であり、二枚の金属板外皮芯材に発泡樹脂を素材として使用するという、特徴ある形状の画期的な建築用品であり、日本国内で初めての形態を有するものである。

すなわち、イソバンドは、二枚の金属板である外皮材の間に、微細な蜂の巣構造いわゆるセル構造で断熱性に優れた樹脂発泡体(断熱性能が最もよい硬質ウレタンフオーム又はイソシアヌレートフオーム等)によって芯材が充填され、二枚の金属板外皮は接続することなく間隔を保って本体が形成されている。右二枚の金属板外皮は、その両端が内側に曲げられ、樹脂発泡体に各埋め込まれた一端は凸状雄側に、他端は凹状雌側に形成されて、接触しないものとされている。

とりわけ、嵌合部の形状は、極めて特徴的である。製品断面は三種類あるが(別紙目録(一)第1図~第3図)、基本的形状はFF型であり、パネル同士を組み立て接合した状態の特徴を要約すると次のとおりである(同第4図)。

<1> 二枚の金属板外皮は芯材発泡樹脂と組み合わされ、その両端が対称に内側に折り曲げられて、右側は凸状雄部、左側は凹状雌部となり、発泡樹脂に埋め込まれた一体のサンドイッチ構造体となる。

金属板外皮はどの部分も芯材発泡樹脂により間隔が保たれ、金属接触する部分はない。

<2> 右側の凸状雄部は、金属板外皮の折曲部がRをつけて九〇度ずつ二回折り曲げられ、先端が更にRをつけて一八〇度に折り返され隙間が形成される。

この隙間を含めて発泡樹脂が充填され、金属板外皮の先端が埋め込まれた形になっている。金属板外皮の端面は開放され、金属接触がなく、発砲樹脂充填の際漏出しないようシールテープによって覆われている。

<3> 左側の凹状雌部は、金属板外皮がRをつけて一八〇度に折り曲げられ、更に金属接触しないよう九〇度ずつ二段に折り曲げられて凹部底面を形成する。発泡樹脂は、一八〇度に折り曲げられた隙間にも充填され、凹部底面の金属板外皮の端面は開放され金属接触がなく、発泡樹脂充填の際漏出しないよう弾性体パッキンにより覆われる。

<4> 右のように金属板外皮の先端が折り曲げられて芯材発泡樹脂の中に一定の長さに埋め込まれているのは、金属板外皮と芯材との剥離を防止するためであるとともに、GF型、SF型のようにパネル外皮の形状が片側溝型・浅いリブ波型の非対称である場合も、フラットな面よりも本来は幅を広くする必要のある他の面について埋め込まれた部分だけ短くなって消費されるので板幅を変える必要がないという利点があるためである。

<5> 雄雌嵌合部は施工が容易なように十分な隙間があり、雄部突端が雌部底面のパッキンに当たって押し付けられ、水密・気密が得られるようになっている。

この雌雄嵌合の深さは、水密・気密性能と施工性が考慮され、しかもパッキンの適正押付力の目安になるようパネル間の目地寸法が一〇mmになるように設定されており、外観の美感をもたらすことになる。また、パネルの損傷等で取り替える場合、簡単にパネル二枚の取付け金具を取り外して一枚を取り替え二枚をおがみ施工ではめ込むことが可能なように特殊な寸法形状となっている。

<6> 雄雌嵌合部は、金属板外皮の凸状雄部の先端R部と雌部凹部底面の九〇度ずつ二段に折り曲げられた肩部分にパッキンを介して押付力を受けるようになっているため、強度のない芯材発泡樹脂が押付力により変形して凹んだり寸法変化をしたりすることがないので、水密・気密性能の低下が防がれ、また金属板外皮と芯材発泡樹脂との間の剥離力が発生しないなどの効果がある。

このように極めて多くの特徴のあるイソバンドは、当時の西ドイツの鉄鋼メーカーであるヘッシュ社が世界で最初に建築用長尺断熱壁パネルの連続式製造法で製造したそれまでにない革新的な製品であり、原告が日本における製造、販売の独占権を得て昭和四六年に製造、販売を開始したものである。軽量で剛性があり、しかも長尺で断熱性が格段に優れ、嵌合部の水密・気密が保たれ、施工性が簡単・軽量なわりに遮音性に優れ、内外装が一度に仕上がるという当時の日本では前例のない建材製品であったため、建設省も、建築基準法上の扱いに苦慮し、建築確認申請の表示の指導及び防火材料の試験方法のJIS改正まで行ったものである。

(3) 従来の組立て式冷蔵庫用パネルは、芯材は硬質ウレタンフオームであったが、バッチ式製法によるため、芯材の均質性に劣り、ボイド(巣)の発生が避けられず、金属板外皮との密着度も弱かった。そのため、これを建築用に使用すると、太陽熱による温度変化により金属板外皮の膨張・収縮と芯材硬質ウレタンフオームの二次発泡とボイドの存在により、パネルが収縮したり膨れたりして変形し、嵌合部に隙間が発生し、水密・気密の機能が低下して使用に耐えられなかった。しかも、長尺品の製造ができず、定尺品以外の不揃いな寸法の製品を生産する場合は極めて生産性が低かった。

イソバンドは、連続式製法によるため、硬質ウレタンフオーム原液が幅方向にノズルを往復動させて散布され、ダブルコンベア内で温度管理され発泡が行われるので、芯材発泡のセル構造が均一となり、十分な熟成がされるため太陽熱による二次発泡の危険性はなく、ボイド発生もほとんどなく、金属板外皮との密着性もよいのでパネル剛性・強度が高い。そのため、建築外装用として太陽熱による膨張・収縮にも十分耐えられる製品となった。更に、走間切断機で指定寸法に自由に切断できるため、極端な場合一枚一枚長さが異なる寸法の製品の製造も可能となったのである。

(4) イソバンドの形状は、さまざまな技術的課題を克服するための選択肢の中から一定の形状が選択され、このような形状の組合せにより極めて特徴のある形状となっており、右形状により多数の建築用壁材の取引者、需要者間において信用性、信頼性が獲得されるとともに、右形状の製品の商品主体が原告であると特定され、広く周知されるに至ったものであり、取引者・需要者は、イソバンドの形状を見ただけで安心してこれを原告の製造、販売にかかるものと信じて購入するに至っている。

(5) イソバンドの外皮表面は、別紙目録(一)のように溝部のない平面のもの(第1図)、三条の溝部が形成されているもの(第2図)、浅い九条の溝部が形成されているもの(第3図)の三種類あり、製品の厚さは二二、三五、四五、六〇、一〇〇、一二〇、一五〇mmの七種類、働き巾は六〇〇、九〇〇、九一〇、一〇〇〇mmの四種類、製品の長さは一・八~一五mのものがあるが、前記形状(嵌合部形状を含む。)はすべて同じである。

(二) イソダッハ

(1) イソダッハ(別紙目録(二))の形態の特徴は、以下のとおりである。

上下二枚の金属板外皮の間に樹脂発泡体である芯材が充填され、

上側の金属板外皮には五条の凸脈が形成され凸脈間が谷となり、

一端の凸脈の裏側には芯材が充填されていなくて雌部となっており、他端の凸脈の裏側には芯材が充填されて雄部となっている形状の断熱屋根パネル

(2) 技術的特徴をも含めていえば、金属板外皮のパネル状の屋根はプレハブ住宅、仮設ハウスに使用されるところ、従来は、合板製の木枠パネルに着色亜鉛鉄板を釘で取り付け、パネル間接続は吊子を介してキヤップを取り付ける構造のものしかなかったが、これに対して、イソダッハは、ドイツのヘッシュ社が一九七五年に開発した、長尺、軽量で、剛性があり、断熱性に優れ、嵌合部の水密・気密性がよく、施工が簡単な特徴あるサンドイッチ構造の屋根用の建築パネルを、同社との技術援助契約の範囲内のものとして原告が日本向けに改良して初めて製品化したものである。

すなわち、イソダッハは、上下二枚とも金属板である外皮材の間に微細な蜂の巣構造(セル構造)で断熱性に優れた樹脂発泡体(硬質ウレタンフオーム又はイソシアヌレートフオームなど)によって芯材が充填され、金属板外皮は間隔を保って形成されている。上側の金属板外皮には五条の凸脈が形成され、凹脈の間が谷部になっていて、パネル本体の一端の凸脈の裏側には芯材樹脂発泡体が充填されずに雌部となり、他端の凸脈の裏側には芯材樹脂発泡体が充填され雄部となっている。下側の金属板外皮は、両端が内側に折り曲げられ、芯材樹脂発泡体に埋め込まれたうえ、上側金属板外皮の雄部凸脈側は裏側下嵌合部となる凸状雌側となり、他端の雌部凸脈側は裏側上嵌合となり、芯材樹脂発泡体に埋め込まれた雄側となる嵌合部を形成して、パネル同士の間はヒートブリッジにならない状態となっている。

屋根パネル同士の接合については、上側金属板外皮の雌部凸脈の裏に貼着されているパッキンと雄部凸脈の側面に貼着されているパッキンを介在させて、雌部と雄部が嵌合され、水密・気密を保つようになっている。

(3) イソダッハの製品厚さ(谷部)は二五・三五・四五mmの三種類、金属板外皮の厚さは上側〇・六mm(イソダッハⅡ種は〇・八mm)、下側〇・四mmである。

働き巾は一〇〇〇mmで、製品長さは一・八ないし二〇mのものがあるが、前記形状(嵌合部形状を含む。)はすべて同じである。

2 原告商品の販売体制

薄鋼板、亜鉛メッキ鋼板、塗装鋼板等の既存の製品は商社、準窓問屋、地方特約店という流通経路で販売されてきたが、イソバンドのような連続式設備による大量生産の、しかも国内で最初の新建材製品を販売するには、メーカー自身が国内全域に販売するシステムが必要である。そのため、原告は、各地に営業所を設置し、販売員を現地採用する等、販売部の増員をした。原告出資の関連会社である屋根・壁工事の施工会社である大同建材工業株式会社、準窓問屋の大同鉄鋼株式会社等にも、原告と同様、各地に営業所を展開させ、販売体制を確立した。

また、イソバンドの販売には設計織込活動、受注時の施工図の割付図の作成が必要であるため、原告は、一級建築士、二級建築士を集め、大手ゼネコン設計部長を定年退職した人物を採用し、昭和四六年八月に一級建築士事務所を開設し、開発室を解散して技術開発部建材開発グループを設置した。

そして、原告は、イソバンドを使用したユニットハウス一棟を輸入し、組立施工の訓練と、カットサンプル及び施工例のための見本の作成等PR活動の準備を開始し、ヘッシュ社のマニュアルを参考にして販売員、技術サービス員用の技術マニュアル、PR用の施工の手引き、カタログを作成した。バッチ設備によりイソバンドの定尺品(幅九一〇mm、長さ一八二〇mm、二四三〇mm、厚さ三五mm、六〇mm、一二〇mm)と同じ厚さのコーナーパネルの製造を開始し、PR用のカットサンプルと施工例見本のユニットハウス、レジヤーハウス、組立式冷蔵庫、勉強部屋用イソバンドを製作した。

前例のない新製品であったため、建設業者、設計事務所、プレハブメーカー等主として建築業界に対するPR及び販売活動上一番問題となったのは、建築基準法上の確認申請手続であり、原告は、防火材料であるイソバンドⅡ種を商品化するまで、都道府県及び各市の建築指導課の理解を得るのに苦労した。

3 原告商品の宣伝広告

原告商品(イソバンド)は、日本では最初の複合建材の新製品であり、製品の機能、利用方法、施工方法等すべてを需要家に理解してもらい、知名度を上げなければならなかったため、原告は、全国的に次のような宣伝広告を行った。

(一) PR誌、新聞、各種の施工の手引きの発行

原告は、変形A五判で発行部数五〇〇〇部であったPR誌「大同ニュース」をA四判、一万部とし、イソバンドの記事掲載のものを昭和四六年一月号から昭和四九年一一月号まで年六回、昭和五〇年一月号から昭和五六年九月号まで年四回、昭和五七年一月号から現在まで年二回ないし三回継続発行している(甲第一三号証の1~13)。イソダッハについては、昭和五六年五月号から記事を掲載している。昭和六二年七月以降は、発行部数を六〇〇〇部としている。配布先は、公的機関(都道府県及び各都市の建築部・住宅部、大学の工学部、建設省建築研究所、地方建設局等)・農協経済連・建設業者(ゼネコン、工務店の設計部門)・設計事務所・プレハブメーカー・仮設ハウスメーカー・屋根壁工事業者・防熱工事業者等の建築関係分野、商社・板金店兼施工業者・板金特約店・建築材特約店・鋼材特約店等の流通分野、乾燥機械・食品醸造設備・組立式冷蔵庫・冷凍冷蔵施設の各メーカー、食品醸造業者・冷凍冷蔵業者・農水産施設業者、通信装置・コンテナ・冷凍保冷車・造船重機・半導体電子機器の各メーカー等の需要家、施主である大手企業の施設部・購買部などである。

また、原告は、板金特約店・板金特約店兼施工業者、その傘下の板金業者・建築材料特約店・建築材料特約店兼施工業者、その傘下の建材施工業者を対象として、昭和四八年三月から新聞形式のPR紙「住まいの屋根・壁」を年二回ないし四回(平成五年一月で第六六号)の頻度で各二万部発行し、原告商品の記事を掲載してPRを継続している(甲第二二号証の1~4)。

更に、施工方法、利用技術の普及のため、各種の施工の手引きを発行している(甲第二三号証の1~5)。

(二) 展示場における原告商品の展示

(1) 原告は、各地に開設していた常設展示場において、昭和四六年一月以降原告商品のサンプルとカタログ、施工写真を展示した。多いときは札幌展示場から那覇ショールームまで全国十数か所に及んだが(甲第一二号証の3)、現在は、東京の日本建築センター晴海総合展示場、金沢の石川県板金工業組合、尼崎商工会議所の三か所となつている(同号証の1・2)。

(2) 原告は、昭和四六年五月、ヘッシュ社から輸入したイソバンド及び湖南製造所のバッチ設備により製造した定尺のイソバンドを使用したモデルハウス(勉強部屋、現場事務所用ユニットハウス、組立式冷蔵庫、レジャーハウス等)と、ヘッシュ社から輸入したユニットハウスを、尼崎の本社工場に展示した。これらのモデルハウスは、同年一〇月二二日から一一月八日まで大阪市港区の国際見本市会場で開催された「国際消費材見本市インターリビング七一」(甲第二四号証)、昭和四七年五月四日から三一日まで東京晴海の国際見本市会場で開催されたマイホームと住宅産業展「第二回国際グッドリビングショー」にも展示され、同年四月五日の湖南製造所竣工披露式においても、工場敷地に新規に需要家と提携した煙草乾燥装置、牧草乾燥装置、保冷車等とともに展示された。

(3) 原告は、昭和四七年六月、製造販売元・日東工営株式会社、総販売元・三井物産株式会社として、イソバンドを使用した勉強部屋を三越デパートの屋上に展示して販売を開始した。同様に製造元・常盤産業株式会社、発売元・エム・テー・ピー化成株式会社として、六角型で連結して増築可能のユニットハウスを展示発表した。

(4) 原告は、昭和四八年二月二四日から三月二日まで東京晴海の国際見本市会場で開催された「第二回店舗システムショー」にイソバンドを使用した店舗を展示した。

(5) 原告は、右のような大規模な展示会以外に、年に三回ないし四回、各地で開催される建材製品展や住宅展に参加し、更に特約店での展示会を入れて年一〇回から四〇回の展示を行い、原告商品の展示とカタログの配布、スライドやVTRによる説明により、周知性を高める努力を行っている。

(三) 流通分野へのPR

原告は、塩化ビニール拡販のため年二回開催していた原告の特約店組織「ビニエバー会」や、現在も続いている各営業所中心の特約店組織「かりがね会」において、原告商品の説明会を実施し、更に、各都道府県別に営業所とその地区の特約店による設計事務所・ゼネコン・工務店・設備メーカー・施主への訪問、キャンペーンセールを年四回ないし六回実施している。

(四) 大手ゼネコン及び設計事務所等建築業界へのPR

通常の営業ベースの訪問とは別に、大手ゼネコンの本社又は支店の設計部・建築部・購買部・合同の説明会、大手設計事務所が行つている勉強会に積極的に出席して原告商品の説明を行い、各都道府県の建築士会・建築学会等における新製品の説明会で原告商品をPRした。

(五) 業界紙、業界誌等への製品紹介記事及び広告の掲載

建設省建築研究所監修・有限会社建築技術発行の「建築技術」二三九号(昭和四六年七月号)、二四〇号(同年八月号)に掲載されたイソバンド開発者の一人オットー・ユンクブルート(植木久訳)「構造工学におけるサンドイッチ面構造」(甲第一八号証の1・2)により、サンドイッチパネルの開発経過とイソバンドの製品説明が発表され、原告は発売当初のPRに際してこれを利用した。また、原告は、イソバンドの発売当時、建築、冷凍冷蔵、食品醸造、鉄鋼等、イソバンドの使用が期待される業界の新聞・雑誌に性能、利用技術、製法の記事及び広告を掲載した(甲第二五号証の1~5)。その広告掲載料は年間二〇〇〇万円になる。

4 原告商品の販売実績

(一) イソバンド

イソバンドは、前記1(一)のとおり日本で最初の特殊な形状の商品であったため、建設業界の関心が極めて高く、前記2、3のとおりの原告の販売努力とPRにより、販売量は、原告が独占権を得て製造、販売を始めた昭和四六年から平成四年一二月までの間の累計で一二〇〇万m2に達している。

イソバンドの平成三年一二月までの間の販売量累計の営業所別割合は、本社(近畿・四国)四二・六%、東京支店(関東・甲信越)二九・八%、札幌営業所七・四%、東北営業所四・一%、北陸営業所(福井・石川・富山)二・七%、名古屋営業所(愛知、岐阜、三重、静岡)六・八%、中国営業所二・六%、九州営業所四・〇%となっており(甲第二六号証)、イソバンドは国内全域にわたって販売されている。

しかも、昭和四六年から平成元年までの一八年間は、建築用の連続式製法による断熱サンドイッチパネルとしては、原告が独占的に販売してきたものである。

(二) イソダッハ

イソダッハの販売量は、原告が日本における独占権に基づき製造、販売を始めた昭和五六年から平成四年一二月までの間で累計二〇〇万m2に達している。

イソダッハの平成三年一二月までの間の販売量累計の営業所別割合は、本社三五・三%、東京支店三〇・八%、札幌営業所一・六%、東北営業所三・二%、北陸営業所〇・九%、名古屋営業所一六・六%、中国営業所六・四%、九州営業所五・二%となっており、国内全域にわたって販売されている。

5 原告商品の形態の商品表示性、周知性

(一) イソバンドは、前記のとおり、原告により独占的に全国にわたって大量に販売され、その形態に特徴があったので、その形態が原告に由来するものとして広く知られるに至った。

イソバンドのカタログの表紙は、長期にわたり、特徴ある雄雌嵌合部の図と、「これがイソバンドです!」又は「DAS IST DIE ISOWAND!」との表示のあるものであり、見る人の印象が強く、業界では建築用サンドイッチパネルといえば、前記の形態を有するイソバンドのことを指称するものとして知名度が高い(甲第一四号証の1・2)。

(二) イソダッハについても、昭和五六年から平成二年までの一〇年間、日本における唯一の断熱屋根パネル製品であって、長尺軽量・剛性・断熱・結露防止・防水に優れた商品として、原告が独占的に販売していたこと、特徴ある形態であったこと、原告のPRと販売努力等により全国にわたり販売したことによって、その形態が原告に由来するものとして広く知られるに至った。

(三) その結果、原告商品の「イソダッハ」及び「イソバンド」の名称、形態及び製造販売業者としての原告の名が前記の文献に紹介され、業界において著名なものとなっている。

そして、長年にわたり原告が莫大な費用を費やしてPRと販売活動をした結果、日本では最初の特徴ある壁用断熱パネル「イソバンド」と屋根用断熱パネル「イソダッハ」の知名度が上がり、最近まで独占に近いシェアで販売実績を上げてきたことから、建築業界では、前記の形態を有する壁用断熱パネルを見れば原告の製造、販売にかかるイソバンドのことを指称し、前記の形態を有する屋根用断熱パネルを見れば原告の製造、販売にかかるイソダッハのことを指称するまでに知名度が高くなった。

(四) イソバンドは、建築材料や設備カタログを掲載する国内唯一の権威ある資料である鹿島出版会発行の「AMカタログ」には昭和四七年から、建築材料の価格の指針として一般的、標準的に使用される「積算資料」には昭和四八年八月号から連続的に掲載され、昭和四七年には全国各地で販売されているから、その商品名とともに形態が昭和四七年頃には周知されるに至った。

イソダッハも、右AMカタログに昭和五八年から連続的に掲載され、同年、「省エネ建材便覧」にも掲載され、全国各地で販売されているから、その形態が昭和五八年には周知されるに至った。

以後、イソバンドは現在まで二一年間以上、イソダッハは一〇年間以上連続して販売されているから、現在においてもその形態が商品表示として周知性を有していることは明らかである。

(五) 原告商品の商品名を伏せ、断面形状図、パネル嵌合部図及び写真を国内各地の需要家、設計織込決定者、発注者、流通業者に見せて、これが原告の特徴ある形態の商品であることを証明してもらった証明書が、イソバンドについて三〇〇通(甲第三九号証の1~300)、イソダッハについて二〇〇通(甲第四〇号証の1~200)存在する。

6 被告の主張に対する反論

(一) 被告は、原告が原告商品の形態の特徴として主張するところはその横断面形状と外皮材の平面形状にあり、断熱サンドイッチパネルの業界ではありふれたものである旨主張するが、原告商品は、その断面形状、両端部の嵌合部の形状及び平面形状により、建築用の壁材・屋根材たる断熱サンドイッチパネルとしてその特徴ある商品形態が特定されるのである。

被告が挙げる他のメーカーの製品の存在は、原告商品の形態が出所識別機能を取得する妨げとなるものではない。

(1) 乙第二号証、第三号証の1・2、第四ないし第六号証(ヘッシュ社、テッセン社、SAB社、KIRIN社、MONOPANELのカタログ)記載の各サンドイッチパネルは、外国において製造、販売されているものであり、日本国内において製造、販売されているものではないから、日本国内を基準として判断されるべき不正競争防止法二条一項一号にいう商品表示性、周知性の取得について影響を及ぼすものではない。

また、被告が右各書証記載のサンドイッチパネルを公知の資料として挙示するものであるとしても、右公知資料が存在することと、原告商品の形態が周知の商品表示として保護されるべきであることとは別個の問題である。

(2) しかも、乙第二号証記載のサンドイッチパネルはヘッシュ社のものである。乙第三号証の1・2、第四ないし第六号証記載の各サンドイッチパネルは、いずれも原告がイソバンドの製造、販売を開始した後に製造、販売されたものである。

また、乙第三号証の1・2記載のテッセン社製造にかかるサンドイッチパネルは、ヘッシュ社との間で特許についてクロスライセンスを行って製造を開始したものであるから、原告商品と同一出所、同一形状のものである。乙第四号証のSAB社もヘッシュ社と提携関係にあったもので、ヘッシュ社製造にかかるサンドイッチパネル及び原告商品と形態が類似するのは当然である。なお、テッセン社、SAB社とも、ヘッシュ社との提携は原告より後である。

乙第五号証記載のサンドイッチパネルは、一九八七年(昭和六二年)に韓国においてKIRIN社が製造を開始したものであるが、日本において同号証及びこれより詳細な原告のカタログをそのまま英語及び韓国語に翻訳したものを配布しかけたため、原告が原告商品と混同を生じるおそれがあるとして警告したところ、右製品及び原告のカタログを翻訳したカタログは回収、廃棄され、日本における販売は中止された。

(3) 被告は、ヘッシュ社が、壁用サンドイッチパネルの製造方法と装置について日本において昭和四二年一二月二二日に特許出願をした明細書に記載された壁用サンドイッチパネルの断面図が、イソバンドのうち両面がフラットなものと略同一であることをもって、かかる商品形態自体が既に右出願当時から、日本において一般に知られていたことを示していると主張するが、かかる商品形態が一般に知られていたか否かは、原告商品の形態が周知の商品表示として保護の対象となることとは直接関係がないのみならず、右特許出願の出願公告は、イソバンドの製造、販売開始後である昭和五〇年三月四日にされたものであり、出願公開制度は昭和四五年の特許法改正により採用されたものであるから、右主張は失当である。

(4) 乙第一三号証記載の「KBフオーム」は、川鉄建材工業株式会社が米国バトラー社より技術導入した鉄骨構造の工場・倉庫のプレハブ建築工法「メタルビル建築」として一棟のメタルビルとして受注し、製造、建築して販売しているものであって、プレハブ建築メタルビルという商品の部品である。

したがって、建築用の壁材である断熱サンドイッチパネルとして単独に販売されているものではないから、建築用の壁材であるイソバンドと取引分野において競合するものではない。

しかも、右「KBフオーム」の嵌合部はイソバンドと異なり、雄雌がテーパー嵌合となっており、雄側の金属板外皮の折曲げが密着折曲げであって、硬質ウレタンフオームに埋め込まれていない形状である。そして、製造方式がバッチ式であり、販売数量は少量である。

(5) 乙第一四号証記載の三晃金属工業株式会社の「サンコーダンネツパネルO型」は、イソバンドとはその嵌合部の断面形状において明らかに異なるものである。しかも、「サンコーダンネツパネルⅠ・Ⅱ型」は、原告が同社に販売して同社がその名で販売している許諾製品であり(販売量は少ない。)、その商品主体はイソバンドと同じく原告であり、商品主体の誤認混同の生じる余地がない。

(6) 乙第一五号証記載の株式会社淀川製鋼所の「ヨドサンドイッチパネル」も、その形状において原告商品と明らかに相違している。

右「ヨドサンドイッチパネル」の形状は、平成三年四月の販売開始に先立ち、株式会社淀川製鋼所からの申出に基づく原告との協議の結果決定されたものである。

すなわち、株式会社淀川製鋼所から原告に対し、関連会社の被告がサンドイッチパネル連続製法設備を設置したので、被告に淀川ブランドの断熱サンドイッチパネルを委託加工させて販売したいところ、壁パネルについては製品の形状をイソバンドと差別化するつもりであり、嵌合部を中心としてイソバンドの形状と区別できるものとするので原告の事前の了解を得たい、との申出があった。何回かの交渉の結果、平成二年七月二七日、同社の断熱サンドイッチパネルの製品形状を乙第一五号証のカタログ記載のもののとおりにすることに確定したので、同社は、この製品形状で被告に委託加工させ、平成三年四月から販売を開始した。

(7) 以上のほか、最近被告以外に連続式製造法で断熱サンドイッチパネル分野に参入したアイジー工業株式会社(甲第二七号証)、株式会社チューオー(甲第二八号証)、東洋ゴム工業株式会社(甲第二九号証)の各製品の形態も、すべてイソバンドと明らかに区別しうるものである。

(二) また、被告は、原告商品はその製品長さがすべて需要者の注文によって決定され、個別的又は独立した一個の商品としての形態を有しないとして、原告商品の形態が出所識別機能を取得することはありえない旨主張するが、建築物の構造に応じて建築用の壁材・屋根材たる断熱サンドイッチパネルの長さが一定の範囲内で異なることは、壁材・屋根材という用途上当然のことであり、他の同種の製品と区別されるべき原告商品の特徴ある形態は、長さとは関係なく、前記のとおり、その断面形状、両端部の嵌合部の形状及び平面形状により特定されるものであるから、原告商品の長さが一定の標準仕様(イソバンドについては一・八ないし一五m、イソダッハについては一・八ないし二〇m)の範囲で異なることがあるからといって、原告商品の形態が出所識別機能を取得しないということは到底できない。被告の主張に従えば、建築用の壁材・屋根材において、用途に応じて一定の範囲で長さが異なることのある商品は、およそ不正競争防止法二条一項一号による保護を受けられないことになってしまう。

【被告の主張】

原告が原告商品の形態の特徴として主張するところは、その横断面形状と外皮材の平面形状にあり、断熱サンドイッチパネルの業界ではありふれたものであって、他のメーカーの断熱サンドイッチパネルとの区別を可能とし出所識別機能を生じさせるほどの形態上の特異性を備えていないのみならず、原告商品はその製品長さが個別具体的な注文によって確定するまで定まらない性質の商品であって、その断面形状を除けば全体として定まった個別的形態を有しないから、その形態が出所識別機能を取得することはない。

1(一) 二枚の金属板(鋼板等)の間に発泡樹脂(硬質ウレタンフオーム又はイソシアヌレートフオーム)を注入発泡させたいわゆるサンドイッチパネルは、日本では原告が昭和四六年頃ヘッシユ社から技術導入して生産を開始したものであるが(乙第八号証)、欧米ではそれ以前から多くのメーカーによって生産されている製品であり、これら欧米の先行各メーカーが生産している壁用及び屋根用の断熱サンドイッチパネルは、ヘッシユ社の同種の製品を含めて略共通の形態的特徴を有している(乙第二号証、第三号証の1・2、第四ないし第六号証)。

原告商品の形態も、従ヘッシユ社が製造販売していた同種の製品の形態と極めて類似したものである(乙第二、第九号証)。

ちなみに、ヘッシユ社は、壁用サンドイッチパネルの製造方法と装置について日本において昭和四二年一二月二二日に特許出願をして特許権を得ており、右特許権は既に存続期間が満了しているが(乙第七号証)、その明細書に記載された壁用サンドイッチパネルの断面図は、イソバンドのうち両面がフラットなものと略同一であり、このような商品形態自体が既に右出願当時から日本において一般に知られていたことを示している。

(二) また、日本においても、現在までに、原告商品及び被告商品の外に、川鉄建材工業株式会社が「KBフオーム」の商品名で(乙第一三号証)、三晃金属工業株式会社が「サンコーダンネツパネルO型・Ⅰ・Ⅱ型」の商品名で(乙第一四号証)、株式会社淀川製鋼所が「ヨドサンドイッチパネル」の商品名で(乙第一五号証)、それぞれ断熱サンドイッチパネルを製造、販売しているが、これら他メーカーが製造、販売するサンドイッチパネルの形態と原告商品の形態との差異は極めてわずかなものであり、そのようなわずかな差異しか有しない原告のサンドイッチパネルの形態、特にその横断面形状が、他のものから区別された個性あるものとして出所識別機能を備えるに至ったものとは到底認めがたい。

例えば、イソバンドの横断面形状は、その両側に嵌合部となる雌部と雄部を形成し、外皮材の表面が溝部のないフラットなもの又は外皮材の片面に複数の浅い溝部を形成したものであるが、嵌合部の形状は、その嵌合機能に由来するありふれたものであり、商品の出所の識別が可能となるほどの特異性を有していないし(乙第七、第一三、第一四号証)、外皮材の表面の形状についても、溝部のないフラットなものは形態的特徴とはいえず、複数の浅い溝部を形成したものも形態的特徴といえるほどの個性、特異性を有していない(この溝部は、元来、外皮材である鋼板等の歪みを防止、除去するという技術的機能に由来するものであり、意匠的な意味合いはない。)。

また、イソダッハの横断面形状は、一方の側に被せ部(裏側に発泡樹脂が設けられていない部分)を、他方の側に敷込み部(被せ部が重ね合わされる部分)を各形成するとともに、外皮材の片面に複数の山形の突条を形成し、他面に複数の浅い溝を形成したものであるが、このような形態は基本的に他のメーカーの屋根用断熱サンドイッチパネルと共通のものであり(乙第一三号証)、イソダッハと他のメーカーの同種製品との形態上の差異は極めてわずかであって、右のわずかな差異がイソダッハに他のものから区別された個性、特異性を付与するものとは認めがたい。

2 更に、後記二【被告の主張】記載のとおり、原告商品は、横幅の寸法及び断面形状は一定であるが、その製品長さはすべて需要者の注文によって決定される。

一般に商品形態が出所識別機能を持ちうるのは、その商品形態が一定であって、その一定の商品形態が需要者に反復継続して印象付けられるためであり、一定の商品形態が存在しない場合は、その商品形態により商品の出所を識別することが不可能であることは見やすい道理である。

したがって、その製品長さが不定であるため個別的又は独立した一個の商品としての形態を有しない原告商品の形態が出所識別機能を取得することはありえない。

二  争点2(被告商品の形態は原告商品の形態と同一又は類似するものであり、その製造、販売によって原告商品との混同を生じさせるか)

【原告の主張】

被告商品は商品形態において原告商品と同一性を有するものであり、被告商品の製造、販売は取引者及び需要者に誤認混同を生じさせるものである。

1 商品形態の同一性

被告商品のサンマリンの形態は、金属板である上下の外皮材1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填されてパネル本体4が形成され、パネル本体の両端には嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成されていることを特徴とし、その平面、断面、側面の各形態の特徴及びその余の形態の詳細は別紙目録(三)のとおりであるところ、特徴的な形態において原告商品のイソバンドと全く同一であるだけでなく、その余の詳細な商品の全形態の特徴においても微細な差異を除き略同一である。

被告商品のサンホルンの形態は、金属板である上下の外皮材1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填されてパネル本体4が形成され、上側の金属板1には五条の凸脈5が形成されて凸脈間が谷部6となっており、パネル本体4の一端の凸脈5の裏側には芯材3が充填されていなくて雌部7となり、他端の凸脈5の裏側には芯材3が充填されて雄部8となっていることを特徴とし、その平面、断面、側面の各形態の特徴及びその余の形態の詳細は別紙目録(四)のとおりであるところ、特徴的な形態において原告商品のイソダッハと全く同一であるだけでなく、その余の詳細な商品の全形態の特徴においても微細な差異を除き略同一である。

そうすると、被告商品は原告商品のデッドコピーというべきものである。

2 混同のおそれ

(一) 被告が原告商品の完全模倣品である被告商品を競合関係にある同一の流通に置けば、取引者等は、流通の各段階において、被告商品を原告商品と見間違い、これを契機として様々な態様の誤認混同を生じさせ流通秩序を混乱させることは明らかである。

すなわち、原告商品は、前記一【原告の主張】記載のとおり原告により長期かつ独占的に製造、販売されてきた結果、原告商品の形態そのものが、原告の商品であるという出所を表示する機能を取得するととともに、長年の実績により、改めて性能検査等をすることなく安心して商品として採用できるという品質を保証する機能をも取得しており、しかもこのようなものとして取引者等の間に周知となっているのであるから、取引者等は、建築用の断熱サンドイッチパネルが原告商品の形態的特徴を具備していることさえ確認することができれば、これを安心して採用するものであるから、被告商品の形態と原告商品の形態が全く同一であることにより混同が生ずることは当然である。

(二) 商品主体の誤認混同は生じるはずがないとする被告の主張は、以下のとおり、断熱サンドイッチパネルの実際の取引態様の把握を誤っており、前提を欠くものである。

(1) 断熱サンドイッチパネルの取引態様は、被告の主張するような取引に限定されることはなく、次の<1>ないし<3>のような多種多様の取引者、需要者が存在するとともに、取引者等がメーカーに直接発注するだけでなく、例えば展示場で原告商品の形態を見た消費者等が建材店との間で取引を成立させる等、相互に多種多様な取引者の組合せによる取引形態が存在するのであり、しかも、断熱サンドイッチパネルの商品形態を示すカットサンプルが問屋、商社、特約店、建材店等に備え置かれており、右のような多様な取引者は、右のカットサンプルの形態を見て取引するものであるから、原告商品と被告商品の形態が同一であるために混同を生ずることは当然のことである。

<1> 原告商品を取り扱う取引として、まず、施主、建築業者、設計事務所が介在する取引において、施主の中には、空調設備を要するビール、紙、電機、食品等多数の業界の需要家がすべて含まれ、法人だけでなく個人も当然存在し、建築業者、設計事務所も全国にわたり大小多数のものが介在しているのであり、しかも、これら原告商品の形態を知る取引者等のすべてが直接メーカーと取引をするわけではなく、問屋、商社、特約店、建材店、その他の種々の第三者が介在する。

<2> 次に、仮設ハウスメーカー、メタルビルメーカー、道路トンネル工事業者、孵卵器・養鶏業者、乾燥機メーカー、組立式冷蔵庫メーカー、醸造設備メーカー等全国にわたる大小多種多様な業界における需要家、あるいは屋根壁工事、防熱工事を業とする業界の全国にわたる大小多種多様な需要家との間で行われる取引においても、これら原告商品の形態を知る需要家は、すべてが直接メーカーと取引をするわけではなく、問屋、商社、特約店、建材店、その他の種々の第三者が介在する。

<3> 前記一【原告の主張】3(二)のとおりの原告の常設展示場や展示会を通じて成立する取引(取引主体が一般消費者である個人を含めて多様である。)、及び同(一)の「大同ニユース」、「住まいの屋根・壁」、同(五)の業界紙、業界誌等への広告掲載、その外一般消費者を対象とするテレビ・ラジオ等による宣伝を通じて原告商品の形態を知った一般消費者たる個人その他の需要家、取引者との間で成立する取引も同様である。

被告は、建築用の断熱サンドイッチパネルについては、一般需要者を対象とする一般住宅用の取引が存在しないかのように主張するが、一般需要者を直接対象とする取引、あるいは店頭取引も当然存在する。

(2) 右のような多種多様な取引において、メーカーに直接発注するような場合は別として、すべての場合に取引者等によって製品の具体的メーカー名が認識されているわけではない(例えば消費者と建材店との間の取引)。

しかも、商品形態が商品表示性を取得するという場合、取引者、需要者において、当該商品形態が誰の表示であるか商品主体の具体的名称が知られることは不要であり、一定の主体を出所とすることが認識されていれば足りるところ、前記のような多様な取引者等においては、「大同鋼板株式会社」あるいは「ダイト工業株式会社」という具体的な商号を知らない者が多数存在し、原告商品の形態だけを見て、従来から存在するある特定の主体の製造、販売に係る商品であると認識しているのであるから、これと同一又は類似の形態の商品が流通に置かれた場合、右商品を原告商品と誤認したまま、具体的メーカー名を問題とすることなく、中間取引者に対し当該形態を有する商品としてこれを発注することがある。仮に注文の際に具体的なメーカー名を認識したとしても、原告商品と被告商品を常に比較対照して違いを認識して注文するわけではないので、被告商品の形態が原告商品の形態と同一であることから、被告商品の形態を見て、これを従来から存在する原告商品の形態により表示されるある特定の商品主体のものと誤認混同して被告商品を発注することは十分ありうることである。

(3) 被告が誤認混同は絶対に生じないかのようにいう「設計織込み」を伴う取引についても、原告商品の永年にわたる取引実績により獲得された信用により、原告商品の形態を見て安心して設計織込みがなされ原告商品が採用されたとしても、原告商品が記載された図面(具体的商品名で表示される場合の外、単にサンドイッチパネルとだけ記載される場合等、様々のケースが存在する。)を提示された建築業者、施工業者、板金特約店、建材特約店等は、形態が全く同一の商品が原告と被告の二社から別々に販売されていることを知らない者も多く、たまたま被告の配布したカタログ、カットサンプルを見て、被告商品の形態が原告商品の形態と同一であることから、原告商品と被告商品との相違を認識しないまま右図面に記載された原告商品と誤認混同して商社、問屋、メーカー等に発注することが多々生じ、原告は獲得した取引先を被告に奪われることになるのである。

(4) 不正競争防止法二条一項一号にいう「混同」については混同のおそれがあれば足りるのであり、現実に混同が生じている実例を挙げなければならないというものではないが、以下のとおり、現実にも混同が生じている。

<1> 特に小型物件等の場合、中小企業・個人等の種々の取引者が介在し、取引経路も複雑であるので、施主等が原告商品の採用を決定しても、種々の理由により原告商品と置換して被告商品が発注、施工されることがある。

例えば、施主豊田工機株式会社の花園工場の件においては、既に建設された同社東刈谷工場にイソバンドを採用した結果が良好であったため、花園工場建設についても同じくイソバンドを採用することとした同社が建築業者竹中工務店名古屋支店にイソバンドの採用を指示し、これに基づいて竹中工務店名古屋支店設計部がイソバンドを設計織込みしたにもかかわらず、現実には施工発注段階で施主の了解なしに被告商品のサンマリンに置換されてこれがイソバンドとして施工されており、工事完了時に同店から施主に提出された竣工図書にも外壁「イソバンド」と記載されている(甲第五一号証の1~3)。

池田商店甚目寺営業所の件においては、当初業界紙に原告のイソバンドが使用されると報道され、完成披露式の席上、サンウラノ設計事務所の所長が原告のイソバンドを使用したと発表し、完成披露の記事にも原告のイソバンドを使用したと明記されているにもかかわらず、実際には、イソバンドの採用に関与した設計事務所の知らないまま、被告商品が施工されている。

<2> 次に、施主等の採用決定者が原告商品の採用を決定し、原告商品が設計織込みされたにもかかわらず、設計図に「イソバンド」「イソダッハ」と記入されず、例えば「サンドイッチパネル」「断熱壁パネル」「(断熱)複合板」「着色亜鉛鉄板(断熱)パネル」「断熱屋根パネル」「複合屋根」等の一般名あるいは「イソバンド相当品」「イソダッハ相当品」と記入されること(甲第三三号証の1・2)があり、この場合、発注の段階で原告商品と混同されて被告商品が発注されることがある。

<3> 小規模の多数の取引者、需要者は、原告商品の形態のみに注目してこれを取引に採用しあるいは発注する場合も多いので、たとえ注文取引であっても、注文先の具体的名称の違いに留意することなく、被告商品の形態を見て有名な原告商品の形態と全く同一であるというだけで被告商品を原告商品であると誤認したまま取引をするのである。多数の需要者の中には、原告商品の形態は知っているが、その他の具体的事項を知らない人が多くいるのである。

仮に被告商品の製造者の商号が原告の商号と違うことに気付いたとしても、被告商品と原告商品の形態が同一であるため、全く別の会社の商品であるとは考えず、両社の間に親子会社、関連会社の関係があるとか、新製品として名称を変更したものであると誤解して、被告商品を採用することも考えられる。

<4> 更に、被告商品が発注、施工された後に、ふくれ、変形、剥離、水漏れ、気密不良等のクレームが生じた場合、原告商品の形態と同一であることより生ずる誤認混同がある。

被告商品が採用され、施工されてすぐにクレームが発生した場合は当然被告がクレーム処理をすることになる。しかし、相当年数を経た後のクレームの場合、施主からクレームを受けた建築業者、施工業者等が以前の業者と同じであれば、使用された商品が被告のものであることは比較的分かりやすいが、中小建設業者や施工業者では廃業や代替りがあり、担当者の交替、書類の散逸等もあり、あるいは種々の事情で業者が変更された場合、クレームを調査した業者が、使用されている被告商品の形態、特に嵌合部が原告商品の形態と全く同一で互換性があるため、これを知名度の高い原告商品と誤解し、原告にクレームを申し立ててくることが予想される(現に、甲第四五号証のとおり、外装用塩ビ鋼板「ビニエバー」ではそのような事態が生じている。)。特に、前記<1>の豊田工機株式会社花園工場の件のように、施主に保管されている竣工図書に「イソバンド」と記載されている場合にはこのような事態が生ずる可能性がある。

そして、被告商品の品質が著しく不良な場合(被告商品は製造を開始して間もないため、その可能性は高い。現に豊田工機株式会社花園工場に使用されているサンマリンの一部にふくれが発生している。)、施主がこれを原告商品と信じているため、原告商品の品質不良であると誤解されたまま処理され、原告商品の名声が傷つけられ、当該施主はもちろんのこと、そのグループ会社や関連会社にも二度と原告商品が採用されなくなることが当然考えられる。

また、クレームだけでなく、豊田工機株式会社のように原告商品と被告商品の両方が使用されている工場において保守・補修工事等の問題が生じた場合、どちらの商品が使用されているのか、取引者の混同が生ずるおそれがある。

【被告の主張】

1 原告商品、被告商品を含む壁用及び屋根用の断熱サンドイッチパネルは、完全な受注生産品であって、不特定多数の需要者に対する販売を目的とした標準的又は定格的な製品長さをもった製品は生産されておらず、しかも、具体的に注文をするのは建築設計の分野における建築業者(元請業者)、施工業者(板金業者)等の専門家に限られていて、設計段階の設計図書における具体的なメーカー又は商標の製品の指定(設計織込み)に基づき、又は建築業者、施工業者、施主のいずれかによる決定に基づき、最終的にメーカーに対して種類、数量、仕様等の詳細を含む注文がされるのであるから、設計図書を作製する設計事務所、又は具体的な発注をする建築業者、施工業者等がその発注に係る製品のメーカーを誤認混同する事態は生じるはずがない。

(一) 断熱サンドイッチパネルの用途は、工場、倉庫、事務所、店舗等の業務用建物又は公共用建物に限られており、一般住宅用としての用途は現在のところみられない(断熱サンドイッチパネルについては、施主ないしは一般の消費者が直接にメーカー、販売店等に注文したり、販売店の店頭や展示場において直接購入することはありえない。)。

そして、これら業務用建物又は公共用建物は、壁面及び屋根の構成が多様であるため、建物ごとに設計がされ、かつ、その設計の内容が異なるのが実情である。

他方、断熱サンドイッチパネルは、各社ごとにその横幅及び横断面形状は一定であるが、原告、被告を含めいずれのメーカーも一定の規格化ないし標準化された製品長さをもった商品は生産しておらず、完全な受注生産の方式がとられており、需要者の注文があって初めて製品の仕様が決定され、メーカーがその仕様に従って生産を開始し、完成した製品を需要者に納品するという取引形態のみがとられている。一般の商品が、注文の有無に関わりなく、販売を見込んで定格的ないし標準的な商品形態のものを生産しておき、多数在庫として保有しつつ販売するという取引形態がとられているのとは全く異なっている。

(二) サンドイッチパネルが完全な受注生産品であることは、サンドイッチパネルの製造、販売に関係する業界及び建築業界では常識に属するが、各メーカーが作成したサンドイッチパネルのカタログや設計・施工の手引き等の記載によっても明らかである。

例えば、原告商品のカタログ(乙第九号証)には、イソバンドの1種及び2種の標準仕様として、製品長さが一・八ないし一五mの範囲内で「設計寸法に切断」される旨、イソダッハについても、同様に製品長さが一・八ないし二〇mの範囲内で「設計寸法に切断」される旨記載されている。また、原告作成のイソバンドの設計・施工の手引き(乙第一〇号証)には、「イソバンドは受注生産です。イソバンドの長さは一・八~一〇mまで設計寸法に切断します。一・八m未満または一〇mを超える場合は、事前にご相談下さい。」(一九頁)、「納期(発注から搬入まで イソバンドの納期は標準色で通常約二〇日です。」(三二頁)等と記載され、イソダッハの設計・施工の手引き(乙第一一号証)にも、「長尺性 連続一貫製造設備で生産されるため、最長一五mまでの運搬可能な範囲で出荷出来ます。」(二頁)、「納期 パネルは受注より現場搬入まで約一ヶ月です。」(九頁)等と記載されており、原告商品が完全な受注生産品であることは明らかである。

被告商品のカタログ(乙第一二号証)にも、標準仕様の製品長さの項目の中に原告商品に関する右記載と同様の記載がされている。

また、川鉄建材工業株式会社作成の「KBフオーム」設計・施工マニュアル(乙第一三号証)にも、「現場での加工を少なくするために所定の長さ寸法で現場搬入され、軽量で取扱いやすく施工が容易です。」(一頁)、「最大長さ 七・七m」(二頁)、「KBフオームの施工図が作成されたら、必ず設計事務所、建設業者等と打合せのうえ、承認をもらってください。」(三八頁)等と記載されており、更に、三晃金属工業株式会社の「サンコーダンネツパネルO型・Ⅰ・Ⅱ型」のカタログ(乙第一四号証)の標準仕様の記載からも、株式会社淀川製鋼所の「ヨドサンドイッチパネル」のカタログ(乙第一五号証)の標準仕様の記載からも、これらの断熱サンドイッチパネルの製品長さが注文によって定まり、したがって、これらが完全な受注生産品であることが明らかである。

(三) 断熱サンドイッチパネルについて、特に製品長さの点で一定の規格化ないし標準化された製品が生産されないのは、主として次のような理由による。

仮に一定の長さを持った標準規格の断熱サンドイッチパネルの製品を使用するとすれば、施工の段階で、断熱サンドイッチパネルの切断加工及び長手方向での接続が必要となるが、工事現場における切断加工は、非常に手間がかかるだけでなく、発生する端材が他の用途には全く使えないので不経済であり、一方、長手方向での接続は、接続のための付属部品を要するので費用が余分にかかるのみならず、多くの箇所での接続を行うことになる分だけ、接続箇所において断熱効果が減殺され、断熱サンドイッチパネル本来の長所が生かされないおそれが生ずる。

また、一定の長さの標準規格の製品を生産してこれを在庫としておくとすると、断熱サンドイッチパネルは非常にかさばる大型の製品であるので大きなスペースを必要とし、極めて不経済となるし、断熱サンドイッチパネルに充填されている発泡樹脂は時間が経つにつれて変色しやすいため、商品価値の点でも好ましくない。

(四) 更に、断熱サンドイッチパネルの取引形態としては、以下のとおり、どのメーカーの製品であるかについて周到な注意が払われ、注文者が注文の相手方であるメーカーの同一性について誤認混同することのありえない個別取引すなわち注文生産取引の形態のみがとられており、このこともまた、断熱サンドイッチパネルの製造、販売に関係する業界及び建築業界において常識に属する。

断熱サンドイッチパネルは、いわゆる「設計織込み商品」であり、建築の設計段階で作成される設計図書の中に当該建築に使用する材料の発注先となる具体的なメーカー名又は材料を特定する具体的な商標を記載すること(設計織込み)によって、材料指定がされる商品である。したがって、断熱サンドイッチパネルのメーカー又はその系列の販売店等は、設計を担当する設計事務所(外部設計の場合)や建築業者(内部設計の場合)に頻繁に働き掛けて自社の断熱サンドイッチパネルの販売活動を行うのであり、その結果、設計織込みが果たされると、原則としてその材料指定に基づいて最終的な発注が指定されたメーカーに対してなされるのである。

断熱サンドイッチパネルの取引量が少量である等の事情によって設計織込みの方法がとられない場合には、建築業者(元請業者)又はその下請業者として断熱サンドイッチパネルの施工を担当する施工業者(板金業者)がその与えられた権限に基づいて自ら使用する断熱サンドイッチパネルのメーカー(商標)を決定し、当該メーカーに対して発注する。

設計織込みを果たしたにもかかわらず、最終的に、材料指定されたメーカー以外のメーカーに断熱サンドイッチパネルが発注される場合もあるが、そのような場合は、建築業者又は施工業者がその与えられた権限に基づいて自ら使用する断熱サンドイッチパネルのメーカー(商標)を決定した結果であって、やはり、当該建築業者又は施工業者からメーカーに対する発注が取引の前提となる。

稀に施主が断熱サンドイッチパネルのメーカー又は商標を指定する場合もあるが、その場合は、建築業者又は施工業者がその指定に従って当該メーカーに発注することになる。

公共工事の場合は、設計織込みにおける一社指定(特定の一社のメーカー又は特定の商標の材料の指定)はなく、断熱サンドイッチパネルについても必ず複数のメーカー又は商標が指定されるが、この場合も、メーカーを決定する権限を与えられている建築業者又は施工業者から特定のメーカーに対する個別的具体的な発注がなされる。

したがって、以上のいずれの取引態様であっても、最終的には、必ず建築業者又は施工業者によって特定のメーカーに対する断熱サンドイッチパネルの発注が行われ、その発注を前提として取引が行われる点は全く変わりがないのである。

(五) 以上のような注文取引においては、具体的な仕様(表面材の色、製品厚、製品長さ、数量、付属品の数等)を定めた商品の注文及びその受諾、受注者による商品の生産、納品書類を伴う納入及び検収、請求書による代金の請求、約束手形、銀行振込等による支払及び領収書の発行、建材メーカーに課される担保義務やメンテナンス義務の履行、商品の不都合によるクレームの処理等の一連の行為が必然的に伴っているのであって、これらの一連の行為を伴う取引が、商品主体ないし相互の取引主体に関する認識なしに、あるいは商品主体に関する誤認混同がされたままで行われることはありえない。

2(一) 原告は、被告が原告商品の完全模倣品である被告商品を競合関係にある「同一の流通」に置けば、取引者等は被告商品を原告商品と見間違い、これを契機として様々な態様の誤認混同を生じさせ流通秩序を混乱させる旨主張するが、右主張は、壁用及び屋根用の断熱サンドイッチパネルは前記のとおり完全な受注生産品としてのみ製造、販売されているという取引の実態を故意に無視し、あたかも、受注の有無とは関係なく、既製品ないし定格品といえる製品が常時生産され、「同一の流通に置かれる」という取引態様が存在するかのような誤った印象を与えるものである。

(二) 原告は、建築用の断熱サンドイッチパネルについて、一般需要者を直接対象とする取引、あるいは店頭取引も当然存在すると主張する。

一般需要者を対象とする取引といっても、断熱サンドイッチパネルが既製品ないし定規格商品として注文の有無と関係なく製造、販売される態様の取引ではなく、工場、事務所、公共用建物等と同様に完全な受注生産品としての取引であり、一般需要者が建材店等の店頭に展示された商品の実物を見て購入するというような取引態様は全く存在しない(例えば、イソバンドについての甲第二号証の1)。

断熱サンドイッチパネルについて店頭取引が存在することの証拠は皆無であり、反対に、前記のとおり、原告商品のカタログ(乙第九号証)には、現在においてもなお原告商品の「製品長さ」が設計寸法によって定まり、その定まった寸法の製品を原告が受注生産することが明記されているのである。

(三) また、原告は、「多様な取引者等」においては、「大同鋼板株式会社」あるいは「ダイト工業株式会社」という具体的な商号を知らない者が多数存在し、原告商品の形態だけを見て、従来から存在するある特定の主体の製造、販売に係る商品であると認識しているのであるから、これと同一又は類似の形態の商品が流通に置かれた場合、右商品を原告商品と誤認したまま、具体的メーカー名を問題とすることなく、中間取引者に対し当該形態を有する商品としてこれを発注することがある旨主張する。

ここにいう「多様な取引者等」がいかなる立場の者を指すのか不明であるが、仮に施主を指すとすれば、施主が直接メーカーや特約店、問屋に注文するようなことはありえないから、原告の主張する右のような取引は、架空のものという外ない。

三  争点3(被告商品の形態は原告商品を酷似的に模倣したものであり、その販売につき不法行為が成立するか)

【原告の主張】

1 原告が原告商品の形態を形成するには、技術上種々の点で困難を克服しなければならなかった。また、右形態は、顧客を吸引しうる魅力的要素を備えている。

したがって、原告商品の形態は営業上価値あるものであり、原告がこれを保持し、使用することは社会経済的な利益であり、法律上保護されるべき利益である。

2 被告は、原告の顧客に対し原告商品のデッドコピーである被告商品を廉価で販売し、原告の顧客を奪ったものであり、不法行為が成立する。

【被告の主張】

1 原告商品の形態は、原告も自認するとおり、すべて技術導入の相手方である当時の西ドイツのヘッシュ社の技術に由来するものであり、原告はこれに改良を加えたにすぎない。原告が自ら創作したものでもない原告商品の形態について独占権を主張するのは不当である。

2 被告商品の形態が嵌合部を含め原告商品の形態と類似するに至ったのは、被告が西ドイツのヘネケ社から装置及び関連技術について指導を受けた結果であり、原告商品の形態を模倣する積極的意思など全くなかった。

被告商品の価格は、原告商品との競合関係により形成されたものであり、原告商品の価格より廉価である場合が生じたとしても、通常の取引における価格競争の結果形成される販売価格の域を出ないものである。

四  争点4(被告が損害賠償責任を負う場合に、原告に賠償すべき損害の額)

【原告の主張】

1 原告は、被告商品(サンマリン)の製造、販売が不正競争行為ないし不法行為に該当することを知りながら、これを左記のとおり製造、販売し、これにより原告商品(イソバンド)の売上げを減少させた。

<1> 製品厚二二mmのもの 四七〇〇m2

<2> 製品厚三五mmで外皮材表面に三条の溝部が形成されているもの 七〇〇m2

<3> 製品厚三五mmで外皮材表面に三条の溝部が形成されていないもの 一四〇〇m2

<4> <3>と同様のもの 八〇〇m2

2 右被告商品に相当するイソバンドを原告が販売した場合、原告の利益率は少なくとも売上げの一〇%であり、一m2当たりの単価は、それぞれ<1>五八〇〇円、<2>四七〇〇円、<3>五〇〇〇円、<4>五三〇〇円であるので、それぞれ右単価に販売量及び利益率を乗じた額の合計である四一七万九〇〇〇円が原告の被った損害の額となる。

【被告の主張】

建築用の断熱壁サンドイッチパネルは、従来から原告、被告以外の業者も日本国内において販売しているから、被告商品の販売額(これに利益率を乗じたもの)が直ちに原告の被った損害の額になるとはいえない。

第四  争点に対する判断

一  争点1(原告商品の形態は商品表示性を取得し、周知性を獲得しているか)

原告は、イソバンドの形態の特徴は「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され、両端に嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成され、右嵌合凸部5と嵌合凹部6は各一個とされている形状の断熱壁パネル」というものであり、イソダッハの形態の特徴は「上下二枚の金属板外皮の間に樹脂発泡体である芯材が充填され、上側の金属板外皮には五条の凸脈が形成され凸脈間が谷となり、一端の凸脈の裏側には芯材が充填されていなくて雌部となっており、他端の凸脈の裏側には芯材が充填されて雄部となっている形状の断熱屋根パネル」というものであり、これらの特徴を有する原告商品の形態はイソバンドが昭和四七年頃に、イソダッハが昭和五八年に原告の商品であることを示す商品表示性を取得し、これが周知性を獲得している旨主張する。

商品の形態は、本来、商品の機能をよりよく発揮させたり、その美感を高めたりするために選択されるものであって、直接的にその出所を表示することを目的とするものではないが、商品の形態が他者の商品と識別しうる特徴を有している場合には、その形態を有する商品が長期間にわたって独占的に販売されるとか、当該商品の形態自体について強力に宣伝がされる等の事情により、商品の形態が第二次的に商品表示性を取得し、これが周知性を獲得することがあるので、以下、この観点から原告商品の形態について判断する。右の判断に際しては、原告商品の主たる需要者層や、原告商品が形態に着目して取り引きされるものか等の取引の実情を考慮すべきであることはいうまでもない。

1  証拠(各項の冒頭に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば、次の(一)ないし(七)の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

(一) イソバンドの発売に至る経緯とその特徴(甲第四号証、第一八号証の1~4、第二〇、第二一号証の各1・2、第四一号証、証人藤井治城)

(1) 従来、壁、屋根などの建材製品に使用する薄鋼板の剛性を増すために、シャーレ状に湾曲させるか、成形によって波をつけて剛性をもたせるか、裏面にリブを付加する方法が採られていた。

これに対し、一九五〇年代以降、超音速ジェット機の翼や宇宙ロケット等の胴体用に、金属板を蜂の巣状に加工したハニカム構造体を芯材とし、その両面に金属板を貼ったものが開発され、次いで硬質ウレタンフォームを芯材としたものが登場した。これを応用して、芯材のハニカム構造体を紙、段ボールによって形成し、両側に金属板を貼った間仕切り、天井材、扉材といった内装材(甲第二〇号証の1)、及び芯材にウレタンフォームを使用し両側に金属板を貼った冷凍冷蔵庫用のパネル(甲第二一号証の1・2)が開発された。

(2) ドイツのヘッシュ社は、一九六七年(昭和四二年)、ウレタンフォームを最初に開発したバイエル社と共同で、上下二枚の金属板外皮の間に芯材として硬質ウレタンフォームなどの発泡樹脂(微細な蜂の巣構造、いわゆるセル構造で断熱性に優れている。)が充填され、二枚の金属板外皮は接続することなく間隔を保っているサンドイッチ構造のパネルを開発し、「イソバンド」の名称でその販売を開始した。

(3) 原告商品イソバンドは、原告が昭和四五年八月にヘッシュ社との間で締結した技術導入契約により日本における独占的製造、販売権を得て、昭和四六年一〇月連続式設備による製造、販売を開始したものである(芯材として硬質ウレタンフォームを使用したイソバンドⅠ種)。

イソバンドの形態は、概ね原告の主張(第三の一【原告の主張】1(一)(2))のとおりであるが、それぞれ機能を達成するためのものである。すなわち、

<1> 二枚の金属板外皮は芯材発泡樹脂と組み合わされ、その両端が対称に内側に折り曲げられて、右側は凸状雄部、左側は凹状雌部となり、発泡樹脂に埋め込まれた一体のサンドイッチ構造体となっている。

これは、二枚の金属板外皮はどの部分も芯材発泡樹脂により間隔を保ち、金属と金属が直接接触するいわゆるヒートブリッジを形成しないようにするためである。また、凸状雄部と凹状雌部が各一箇所で嵌合するようになっているのは、扱いやすくするためである。

<2> 右側の凸状雄部は、金属板外皮の折曲部がRをつけて九〇度ずつ二回折り曲げられ、先端が更にRをつけて一八〇度に折り曲げられ隙間が形成され、右隙間を含めて発泡樹脂が充填され、金属板外皮の先端が埋め込まれた形になっている。

このように金属板外皮の先端が折り曲げられて芯材発泡樹脂の中に一定の長さに埋め込まれているのは、金属板外皮と芯材との剥離を防止するためであるとともに、パネル外皮の形状が片側溝型・浅いリブ波型の非対称である場合も、フラットな面よりも本来は幅を広くする必要のある他の面について埋め込まれた部分だけ短くなって消費されるので板幅を変える必要がないという利点があるためである。

金属板外皮の端面は開放されていて、ヒートブリッジを形成しないようになっているが、芯材の発泡樹脂が充填される際に漏出しないようにするため、紙のシールテープによって覆われている。

<3> 左側の凹状雌部は、金属板外皮がRをつけて一八〇度に折り曲げられ、更に金属接触しないよう九〇度ずつ二段に折り曲げられて凹部底面を形成する。発泡樹脂は、一八〇度に折り曲げられた隙間にも充填され、凹部底面の金属板外皮の端面は開放され金属接触がなく、ゴム状の弾性体パッキンにより覆われる。

金属板外皮の先端が折り曲げられて芯材発泡樹脂の中に一定の長さに埋め込まれている理由は、前記<2>の場合と同様である。弾性体パッキンは、発泡樹脂が充填される際に漏出しないようにするためと、後記<4>のとおりパネル同士が嵌合されるときに雄部に押し付けられ、水密・気密を保つようにするためのものである。

<4> 雄雌嵌合部は施工が容易なように十分な隙間があり、雄部突端が雌部底面のパッキンに当たって押し付けられ、水密・気密が得られるようになっている。この雌雄嵌合の深さは、水密・気密性能と施工性が考慮され、しかもパッキンの適正押付力の目安になるようパネル間の目地寸法が一〇mmになるように設定されている。パネルの損傷等で取り替える場合、簡単にパネル二枚の取付け金具を取り外して一枚を取り替え二枚をおがみ施工ではめ込むことが可能なようになっている。

また、雄雌嵌合部は、金属板外皮の凸状雄部の先端R部と雌部凹部底面の九〇度ずつ二段に折り曲げられた肩部分にパッキンを介して押付力を受けるようになっているため、強度のない芯材発泡樹脂が押付力により変形して凹んだり寸法変化をしたりすることがないので、水密・気密性能の低下が防がれ、また金属板外皮と芯材発泡樹脂との間の剥離力が発生しないなどの効果がある。

(二) イソダッハの発売に至る経緯とその特徴(甲第四一号証、証人藤井治城)

(1) 昭和五一年、原告の社員藤井治城が契約更改のためにヘッシュ社を訪れた際、同社から新製品として屋根材「イソダッハ」の紹介を受け、帰国後その技術導入・商品化を提案したが、ヘッシュ社のイソダッハは、屋外側金属板外皮の凸脈数が六つであるため、原板幅が一二五〇mm以上となり原告では製造不可能であったこと、その他製品厚さや縦継ぎの接合を現場で行う場合の施工費等の問題点があり、製品化は見送られた。

その後、原告は、ヘッシュ社のイソダッハを基本にしつつも、屋外側金属板外皮の凸脈数を五つに減らして原板幅を原告でも製造可能な一二三五mmとし、製品厚さは谷部を最小二五mmにし、縦継ぎを必要とする場合は施工現場で縦継ぎ部の芯材発泡プラスチックフォームを簡単に剥離して次の屋根パネルと重ね合わせて縦継ぎができるようにするなどの改良を加え、昭和五六年に同じ「イソダッハ」の名称で製造、販売を開始した。

(2) 原告商品イソダッハは、上下二枚の金属板外皮の間に芯材として硬質ウレタンフォームなどの発泡樹脂が充填され、二枚の金属板外皮は接続することなく間隔を保っているという形態においては、イソバンドと同じである。

このほか、上側の金属板外皮には五条の凸脈が形成され、凹脈の間が谷部になっていて、パネル本体の一端の凸脈の裏側には芯材樹脂発泡体が充填されずに雌部となり、他端の凸脈の裏側には芯材樹脂発泡体が充填され雄部となっている。下側の金属板外皮は、両端が内側に折り曲げられ、芯材樹脂発泡体に埋め込まれたうえ、上側金属板外皮の雄部凸脈側は裏側下嵌合部となる凸状雌側となり、他端の雌部凸脈側は裏側上嵌合となり、芯材樹脂発泡体に埋め込まれた雄側となる嵌合部を形成しているが、これは、パネル同士の間はヒートブリッジにならないようにするという目的を有している。屋根パネル同士の接合は、上側金属板外皮の雌部凸脈の裏に貼着されているパッキンと雄部凸脈の側面に貼着されているパッキンとを介在させて雌部と雄部が嵌合されることによってなされるが、これは水密、気密を保つためである。

(三) 原告商品の販売体制(甲第四一号証、乙第九号証、証人藤井治城)

原告は、薄鋼板、亜鉛メッキ鋼板、塗装鋼板等の既存の製品は商社、準窓問屋、地方特約店という流通経路で販売してきたが、原告商品のような連続式設備による大量生産の、しかも国内最初の建材製品については、自社で国内全域をカバーする営業拠点を設置する必要があると判断し、各地に営業所を設置し、販売員を現地採用する等、販売部の増員をした。原告出資の関連会社である屋根・壁工事の施工会社である大同建材工業株式会社、準窓問屋の大同鉄鋼株式会社等にも、原告と同様、各地に営業所を展開させ、ここで原告商品の販売をさせた。

また、イソバンドの販売には設計織込活動、受注時の施工図の割付図の作成が必要であるため、原告は、一級建築士、二級建築士を集めて昭和四六年八月に一級建築士事務所を開設し、開発室を解散して技術開発部建材開発グループを設置し、ここに一級建築士、二級建築士等一九人を所属させて技術サービスを行うこととした。

次に、原告は、イソバンドを使用したユニットハウス一棟を輸入し、組立施工の訓練と、カットサンプル及び施工例のための見本の作成等PR活動の準備を開始し、ヘッシュ社のマニュアルを参考にして販売員、技術サービス員用の技術マニュアル、カタログを作成した。また、原告は、連続式設備完成前の同年五月、湖南製造所のバッチ設備によりイソバンドの定尺品(幅九一〇mm、長さ一八二〇mm、二四三〇mm、厚さ三五mm、六〇mm、一二〇mm)と同じ厚さのコーナーパネルの製造を開始し、PR用のカットサンプルと施工例見本のモデルハウス(ユニットハウス、レジャーハウス、組立式冷蔵庫、勉強部屋)を製作した。

一方、イソバンドⅠ種と同一形状で芯材をイソシアヌレートフォームに変更したイソバンドⅡ種は、昭和四六年一〇月、準不燃材料と防火構造の試験に合格したものの、前例のない複合材料の製品であるため評定委員会で保留となったので、原告は、日本建築センター及び建設省に働きかけた末、昭和四九年一二月防火構造の認定を受け、準不燃材料の認定についても、試験方法改正後の昭和五〇年三月準不燃認定番号を取得した。このように防火構造、準不燃材料の認定を受けるのに時間を要したため、建築業界への販売活動においては、建築基準法上の確認申請手続の関係が問題となり、原告は、イソバンドⅡ種を商品化するまで、都道府県及び各市の建築指導課の理解を得るのに苦労した。

(四) 原告商品の宣伝広告(甲第八号証の1・2、第九号証の1~10、第一二号証の1~3、第一三号証の1~13、第一四号証の1~8、第一八号証の1・2、第二二号証の1~4、第二三号証の1~5、第二四号証、第二五号証の1~5、第三六、第四一、第四二号証、乙第九、第一〇号証、証人藤井治城、証人清水計一)

原告は、原告商品について以下のような宣伝広告を行った。

(1) PR誌、新聞、各種の施工の手引き、カタログの発行

原告は、変形A五判で発行部数五〇〇〇部であったPR誌「大同ニュース」をA四判、一万部とし、イソバンドの記事掲載のものを昭和四六年一月号から昭和四九年一一月号まで年六回、昭和五〇年一月号から昭和五六年九月号まで年四回、昭和五七年一月号から現在まで年二回ないし三回継続発行し、イソダッハについては、昭和五六年五月号から記事を掲載している(甲第一三号証の1~13。いずれにおいても、イソバンド、イソダッハの断面図が掲載され、その機能上の特徴が強調されている。)。配布先は、第三の一【原告の主張】3(一)前段記載の公的機関・建設業者等の建築関係分野、商社等の流通分野、乾燥機械メーカー等の需要家、施主である大手企業の施設部、購買部などに及んでいる。なお、発行部数は、昭和六二年七月以降、六〇〇〇部に減らした。

また、原告は、板金特約店・板金特約店兼施工業者、その傘下の板金業者・建築材料特約店・建築材料特約店兼施工業者、その傘下の建材施工業者を対象として、昭和四八年三月から新聞形式のPR紙「住まいの屋根・壁」を年二回ないし四回(平成五年一月で第六六号)の頻度で各二万部発行し、原告商品の広告を掲載している(甲第二二号証の1~4。原告商品の断面図が掲載され、イソバンドについては、「六大特長」として断熱性、軽量性、長尺性、堅牢性、美麗性、経済性が挙げられ、イソダッハについては、製品特性として、断熱性に優れていること、施工が簡単であること、縦継ぎが簡単であること、強度及び剛性に優れていること、軽量であること、遮音効果が良いこと、水密性が万全であることが挙げられている。)。

原告は、施工方法、利用技術の普及のため、設計事務所、建設業者、施工業者向けに各種の施工の手引き(一般建築用のものと用途別のもの)を発行している(甲第二三号証の1~5、乙第一〇号証。イソバンドの材料特性を説明するために断面形状、嵌合部形状も掲載されている。)。

イソバンドのカタログのうち、初期のもの(甲第一四号証の1)は、表紙(及び裏表紙)にイソバンドの嵌合部の図が大きく掲載されて「これがイソバンドです!」又は「DAS IST DIE ISOWAND!」と記載され、その後のもの(同号証の2・5・7・8)も、表紙にイソバンドの嵌合部の図が大きく掲載されて「これがイソバンドです」などと記載され、いずれの場合も本文中にも説明のためにイソバンドの断面形状が掲載されている。イソダッハのカタログ(同号証の3・4)は、断面が手前に見えるようにしてイソダッハを斜め上から見たところの図が表紙に掲載されている。イソバンド、イソダッハ両方のカタログ(甲第三六号証、乙第九号証)は、断面が手前に見えるようにして、イソバンドについては斜め下から、イソダッハについては斜め上から見たところの図が表紙に掲載されている。

(2) 展示場における原告商品の展示

原告は、各地に開設していた常設展示場において、昭和四六年一月以降原告商品のサンプルとカタログ、施工写真を展示した。多いときは札幌展示場から那覇ショールームまで全国十数か所に及んだが(甲第一二号証の3)、現在は、東京の日本建築センター晴海総合展示場、金沢の石川県板金工業組合、尼崎商工会議所の三か所となっている(同号証の1・2)。

原告は、昭和四六年五月、ヘッシュ社から輸入したイソバンド及び前記のとおり湖南製造所のバッチ設備により製造した定尺のイソバンドを使用したモデルハウス及びヘッシュ社から輸入したユニットハウスを、尼崎の本社工場に展示した。これらのモデルハウスは、同年一〇月二二日から一一月八日まで大阪市港区の国際見本市会場で開催された「国際消費材見本市インターリビング七一」(甲第二四号証)、昭和四七年五月四日から三一日まで東京晴海の国際見本市会場で開催されたマイホームと住宅産業展「第二回国際グッドリビングショー」にも展示され、同年四月五日の湖南製造所竣工披露式においても工場敷地に新規に需要家と提携した煙草乾燥装置、牧草乾燥装置、保冷車等とともに展示された。

原告は、昭和四七年六月、製造販売元・日東工営株式会社、総販売元・三井物産株式会社として、イソバンドを使用した勉強部屋を三越デパートの屋上に展示して販売を開始した。同様に製造元・常盤産業株式会社、発売元・エム・テー・ピー化成株式会社として、六角型で連結して増築可能のユニットハウスを展示発表した。

また、原告は、昭和四八年二月二四日から三月二日まで東京晴海の国際見本市会場で開催された「第二回店舗システムショー」にイソバンドを使用した店舗を展示した。

原告は、このほか、東京で開催される建築仕上フォーラム、大阪で開催される総合建築材料・設備展、名古屋で開催される建築総合展NAGOYA等に出展し、更に特約店での展示会を入れて年一〇回から四〇回の展示を行い、原告商品の展示とカタログの配布、スライドやVTRによる説明をしている。

(3) 流通分野へのPR

原告は、塩化ビニール拡販のため年二回開催していた原告の特約店組織「ビニエバー会」や、現在も続いている各営業所中心の特約店組織「かりがね会」において、原告商品の説明会を実施し、更に、各都道府県別に営業所とその地区の特約店による設計事務所・ゼネコン・工務店・設備メーカー・施主への訪問、キャンペーンセールを年四回ないし六回実施している。

(4) 大手ゼネコン及び設計事務所等建築業界へのPR

通常の営業ベースの訪問とは別に、大手ゼネコンの本社又は支店の設計部・建築部・購買部・合同の説明会、大手設計事務所が行っている勉強会に積極的に出席して原告商品の説明を行い、各都道府県の建築士会・建築学会等における新製品の説明会で原告商品をPRした。

(5) 業界紙、業界誌等への製品紹介記事及び広告の掲載

建設省建築研究所監修・有限会社建築技術発行の「建築技術」二三九号(昭和四六年七月号)、二四〇号(同年八月号)に掲載されたイソバンド開発者の一人オットー・ユンクブルート(植木久訳)「構造工学におけるサンドイッチ面構造」(甲第一八号証の1・2)により、サンドイッチパネルの開発経過とイソバンドの製品説明が発表され、原告は発売当初のPRに際してこれを利用した。原告は、イソバンドの発売当時、建築、冷凍冷蔵、食品醸造、鉄鋼等、イソバンドの使用が期待される業界の新聞・雑誌(亜鉛鉄板会編集「亜鉛鉄板」等)に性能、利用技術、製法の記事及び広告を掲載した(甲第二五号証の1~5)。現在も、年間一〇回以上、原告商品の広告を一般紙及び業界紙に掲載している。

また、原告は、日本の代表的な建材を網羅した権威ある鹿島出版会発行の「AMカタログ」に、イソバンドについては昭和四七年から、イソダッハについては昭和五八年から広告を掲載している(甲第九号証の1~10)。

イソバンドは、建築材料の価格の資料として一般的に用いられる財団法人経済調査会発行の「積算資料」にも昭和四八年八月号から掲載されている(甲第八号証の1・2)。

(五) 原告商品の販売実績(甲第二六、第四一号証、乙第八号証、証人藤田治城)

イソバンドの販売量は、昭和四六年一〇月から平成四年一二月までの間の累計で一二〇〇万m2に達しており、平成三年一二月までの間の販売量累計の営業所別割合は、第三の一【原告の主張】4(一)中段記載のとおりである。

イソダッハの販売量は、昭和五六年から平成四年一二月までの間の累計で二〇〇万m2に達しており、平成三年一二月までの間の販売量累計の営業所別割合は、第三の一【原告の主張】4(二)後段記載のとおりである。

外装用金属サンドイッチパネルの業界には、原告に続いて、昭和五四年に三晃金属工業株式会社が「サンコーダンネツパネル」を、昭和五八年に川鉄建材工業株式会社が「KBフォーム」を製品化してそれぞれ参入したが、三晃金属工業株式会社は昭和六一年から特定ユーザー向けを除いて一般向けの製造、販売を中止しており、原告商品のシェアは、昭和六一年において九〇%を占めている。

(六) 断熱サンドイッチパネルの取引形態(甲第四二号証、第五九号証の2・3、乙第九ないし第一五号証、第一七号証の1~5、第一八号証、第一九、第二〇号証の各1~5、第二一号証の1~8、第二二号証の1~5、第二三、第二四号証、第二五号証の1・2、第二六、第二七号証、第二八号証の1~3、第二九、第三〇号証、第四五号証の1・2、証人藤井治城、同清水計一、同長野英穂、同鈴木章夫)

(1) 建物の建築に使用する断熱サンドイッチパネルは、各社ごとにその横幅及び横断面形状は一定であるが、原告、被告を含めいずれのメーカーも一定の規格化ないし標準化された製品長さを有する商品は生産しておらず、需要者の注文に従って製品の長さ、厚さ、表面材の色等の具体的な仕様が決まった上で、その仕様に従って生産を開始し、完成した製品を需要者に納品するという取引形態のみがとられている商品であり、一般の商品が、注文の有無に関わりなく、販売を見込んで一定の規格化ないし標準化された商品形態のものを生産しておき、多数在庫として保有しつつ販売するという取引形態がとられているのとは異なっている。したがってまた、この種商品については、一般の消費者が建材店の店頭で商品の実物を見て直接購入するようなことはない(原告は、一般需要者を直接対象とする取引、あるいは店頭取引も当然存在する旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。)。

(2) 右のように断熱サンドイッチパネルについて、特に製品長さの点で一定の規格化ないし標準化された製品が生産されないのは、このような一定の製品長さを有する製品を生産しておくとすると、以下のような問題があるからである。

すなわち、一定の製品長さを有する断熱サンドイッチパネルを建物の建築に使用するとすれば、建築すべき建物に寸法が合っていないため、施工の段階で、断熱サンドイッチパネルの切断加工及び長手方向での接続が必要となるが、工事現場における切断加工は、非常に手間がかかるため施工工程に影響するだけでなく、断熱サンドイッチパネルは相当高価なものであるにもかかわらず、木材等と異なり、発生する端材が他の用途には全く使えないので不経済であり、一方、長手方向での接続は、接続のための付属部品を要するので費用が余分にかかるのみならず、多くの箇所での接続を行うことになる分だけ、接続箇所において断熱性・水密性・気密性が減殺され、断熱サンドイッチパネル本来の長所が生かされないおそれが生ずる。

また、断熱サンドイッチパネルは、パネルの厚みが多様であり、施主の希望する表面材の種類も多いことなどから、一定の規格品を見込み生産すると、在庫を抱える危険が大きく、非常にかさばる大型の製品であるので大きなスペースを必要とし、極めて不経済となる。

(3) 断熱サンドイッチパネルは、いわゆる「設計織込み商品」であり、建築の設計段階で作成される設計図書の中に当該建築に使用する材料の発注先となる具体的なメーカー名又は材料を特定する具体的な商標を記載すること(設計織込み)によって、材料指定がされる商品である。したがって、断熱サンドイッチパネルのメーカー又はその系列の販売店等は、設計を担当する設計事務所(外部設計の場合)や建築業者(内部設計の場合)に頻繁に働き掛けて自社の断熱サンドイッチパネルの販売活動を行う。採否に当たって重視されるのは、性能、施工性、機能性、過去の実績、信頼性、コスト等である。原告の場合、設計担当者の要求により、強度・風圧・断熱の計算、断熱に伴う結露の問題、遮音性・吸音性等についてのデータを提供したり、原告商品とサッシその他の部材との収まりについて提言したりしている。その結果、設計織込みが果たされると、原則として(高い確率で)その材料指定に基づいて最終的な発注が指定されたメーカーに対してなされる。但し、実際に発注を行うのは、建築業者から下請けした施工業者である。

断熱サンドイッチパネルの取引量が少量である等の事情によって設計織込みの方法がとられない場合には、建築業者(元請業者)又はその下請業者として断熱サンドイッチパネルの施工を担当する施工業者がその与えられた権限に基づいて自ら使用する断熱サンドイッチパネルのメーカー(商標)を決定し、当該メーカーに対して発注する。

設計織込み後も、材料の変更を目的とした受注競争があり、最終的に、材料指定されたメーカー以外のメーカーに建築業者又は施工業者から断熱サンドイッチパネルが発注される場合もあるが、そのような場合は、建築業者又は施工業者が、その与えられた権限に基づき、あるいは施主等採用権限を有する者の承諾を得て、当該建築工事に使用する断熱サンドイッチパネルのメーカー(商標)を決定した結果であることがほとんどである。

稀に施主が断熱サンドイッチパネルのメーカー又は商標を指定する場合もあるが、その場合は、建築業者又は施工業者がその指定に従って当該メーカーに発注することになる。

公共工事の場合は、設計織込みにおける一社指定(特定の一社のメーカー又は特定の商標の材料の指定)はなく、断熱サンドイッチパネルについても必ず複数のメーカー又は商標が指定されるか、一般的な名称が使用されることになるが(「イソバンド相当品」「イソダッハ相当品」「サンドイッチパネル」「金属サンドイッチパネル」「断熱壁パネル」「着色亜鉛鉄板断熱パネル」「断熱屋根パネル」等)、この場合も、メーカーを決定する権限を与えられている建築業者又は施工業者から特定のメーカーに対する個別的具体的な発注がなされる。

(七) 同種商品の形態(甲第四一号証のほか、各項目に掲記のもの)

(1) 原告商品の前記(一)(3)、(二)(2)の形態(イソダッハについては日本向けに変更された点を除く。)と同様の形態を有する商品は、ドイツでは、原告が技術導入契約を締結した相手方であるヘッシュ社(乙第二号証)のほか、同社とクロスライセンス契約を締結したテッセン社(乙第三号証の1・2)、ヘッシュ社と提携関係にあったSAB社(乙第四号証)によって販売されている。

一九八七年、韓国において、KIRIN社が原告商品と同様の形態を有する断熱サンドイッチパネルの製造を開始し(乙第五号証)、日本においても同号証及びこれより詳細な原告のカタログをそのまま英語及び韓国語に翻訳したものを配布しかけたため、原告が原告商品と混同を生じるおそれがあるとして警告したところ、右製品及び原告のカタログを翻訳したカタログは回収、廃棄され、日本における販売は中止された。

ヨーロッパでは、このほかにも、原告商品と同様の嵌合部の形態(但し、雄部、雌部の金属板外皮がどのように折り曲げられているかは必ずしも明らかでない。)を有する商品が販売された(乙第六号証)。

(2) 川鉄建材工業株式会社が昭和五八年から販売している「KBフォーム」(乙第一三号証)は、原告がイソバンドの形態の特徴であると主張する「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され、両端に嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成され、右嵌合凸部5と嵌合凹部6は各一個とされている形状の断熱壁パネル」との形態を備えているが、嵌合凸部と嵌合凹部とがテーパーとなっており、また、嵌合凸部の金属板外皮先端が隙間を形成することなく密着して折り返され、硬質ウレタンフォームに埋め込まれていない点でイソバンドと相違している。

(原告は、右「KBフォーム」は、川崎建材工業株式会社が米国バトラー社より技術導入した鉄骨構造の工場・倉庫のプレハブ建築工法「メタルビル建築」として一棟のメタルビルとして受注し、製造、建築して販売しているものであって、プレハブ建築メタルビルという商品の部品であり、したがって、建築用の壁材である断熱サンドイッチパネルとして単独に販売されているものではないから、建築用の壁材であるイソバンドと取引分野において競合するものではないと主張するが、「KBフォーム」のパンフレットである右乙第一三号証には、これが「メタルビル建築」専用の部材であるとの記載は一切なく、かえって、用途として「工場、倉庫、事務所、体育館及びスーパーマーケット、その他空調を必要とする建物の屋根、壁材に使用が可能です。」と記載されており、また、産業統計研究所「断熱建材市場の全調査一九八七年版」〔乙第八号証〕には、「川鉄建材工業のKBフォームは工場・倉庫用が圧倒的に多く、全販売量の八〇%を占める。そのほかスーパー、事務所、体育館などに使用されている。同社の場合は昭和四七年から米国バトラー社より技術導入したシステム建築『川建メタルビル』を手がけているが、KBフオームは同建築の外壁材として使われており、KBフオーム全体の約五〇%を使用し、残りの半分は一般ルート販売している。」「川鉄建材工業のKBフオームはフラットタイプとリブタイプがあり、前者を壁用、後者を屋根用として販売している。」と記載されているところであって、KBフオームは建築用の壁材として原告商品と競合するものであることが認められる。)

(3) 原告と同様に新日本製鉄株式会社系列に属する三晃金属工業株式会社が昭和五四年から販売していた「サンコーダンネツパネル」(乙第一四号証)のⅠ、Ⅱ型は、イソバンドと同様の形態であるが、これは原告が同社に販売して同社がその名で販売しているいわゆるOEM製品である(乙第八号証)。同製品のO型は、原告がイソバンドの形態の特徴であると主張する「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され、両端に嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成され、右嵌合凸部5と嵌合凹部6は各一個とされている形状の断熱壁パネル」との形態を備えているが、嵌合凸部、嵌合凹部ともイソバンドと比べて段差のある複雑な形状をしていて嵌合凸部の最突端と嵌合凹部の最も窪んだ箇所が中心部からずれた位置で嵌合しており、また、金属板外皮の先端が硬質ウレタンフォームに埋め込まれていない点でイソバンドと相違している(但し、前記(五)末尾記載のとおり、三晃金属工業株式会社は、昭和六一年から特定ユーザー向けを除いて一般向けの製造、販売を中止している。)。

(4) 株式会社淀川製鋼所が平成三年四月から製造、販売している「ヨドサンドイッチパネル」(甲第三五号証、乙第一五号証)は、原告がイソバンドの形態の特徴であると主張するところのうち「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され」ているという点は備えているが、左右両端にそれぞれ嵌合凸部と嵌合凹部とが形成されていて互い違いに嵌合するようになっている点でイソバンドと相違している。なお、金属板外皮の先端が硬質ウレタンフォームに埋め込まれている点では共通している。

右「ヨドサンドイッチパネル」の形状は、平成三年四月の販売開始に先立ち、株式会社淀川製鋼所からの申出に基づく原告との協議の結果決定されたものである。すなわち、平成元年一〇月、株式会社淀川製鋼所から原告に対し、関連会社の被告がサンドイッチパネル連続製法設備を設置したので、被告に淀川ブランドの断熱サンドイッチパネルを委託加工させて販売したいところ、壁パネルについては製品の形状をイソバンドと差別化するつもりであり、嵌合部を中心としてイソバンドの形状と区別できるものとするので原告の事前の了解を得たい、との申出があった。何回かの交渉の結果、平成二年七月二七日、同社の断熱サンドイッチパネルの製品形状を前記のとおりにすることに確定したので、同社は、この製品形状で被告に委託加工させ、販売を開始した。

(5) 以上のほか、最近被告以外に連続式製造法で断熱サンドイッチパネル分野に参入したアイジー工業株式会社(甲第二七号証)、株式会社チューオー(甲第二八号証)、東洋ゴム工業株式会社(甲第二九号証)の各製品は、原告がイソバンドの形態の特徴であると主張するところのうち「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され」ているという点は備えているが、いずれも嵌合部の形状がイソバンドと相違している。

2  右1認定の事実によれば、原告は、西ドイツ(当時)のヘッシュ社から日本における独占的製造、販売権を得て、昭和四六年一〇月から原告商品イソバンドを、昭和五六年から原告商品イソダッハを製造、販売しているところ、各地における営業所の設置、技術開発部建材開発グループの設置、防火構造・準不燃材料の認定を受けるための働きかけを行う等、販売体制を強化するとともに、PR誌・新聞・各種の施工の手引き・カタログの発行、展示場における展示、流通分野・建築業界へのPR、業界紙(誌)への製品紹介記事及び広告の掲載を行うなど原告商品の宣伝広告に努めており、外装用金属サンドイッチパネルの業界における原告商品のシェアは昭和六一年において九〇%を占めている(前記1の(一)ないし(五))、というのであるが、一方、原告商品は、壁又は屋根用の断熱サンドイッチパネルであって、採否に当たって重視されるのは、性能、施工性、機能性、過去の実績、信頼性、コスト等であり、原告もこの点を重視して営業活動を行っており、しかも、原告、被告を含めいずれのメーカー(原告、被告以外のメーカーは前記1(七)の(2)ないし(5)のとおり)も一定の規格化ないし標準化された製品長さを有する商品は生産しておらず、需要者の注文に従って製品の長さ、厚さ、表面材の色等の具体的な仕様が決まった上で、その仕様に従って生産を開始し、完成した製品を需要者に納品するという取引形態のみがとられている商品であり、一般の消費者が建材店の店頭で商品の実物を見て直接購入するようなことはない(前記1(六))というのであって、取引上、機能を離れた形態それ自体の占める重みは低いものといわざるをえず、したがって、メーカー名を認識することなく一定の形態を有しているということだけで取り引きされるという事態は考え難い。

原告がイソバンドの形態の特徴であると主張する「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され、両端に嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成され、右嵌合凸部5と嵌合凹部6は各一個とされている形状の断熱壁パネル」、イソダッハの形態の特徴であると主張する「上下二枚の金属板外皮の間に樹脂発泡体である芯材が充填され、上側の金属板外皮には五条の凸脈が形成され凸脈間が谷となり、一端の凸脈の裏側には芯材が充填されていなくて雌部となっており、他端の凸脈の裏側には芯材が充填されて雄部となっている形状の断熱屋根パネル」という点も、金属板外皮の間に樹脂発泡体を充填して金属板外皮に剛性をもたせるとともに金属板外皮同士の間に熱が直接伝わらないようにし、両端に嵌合凸部(雄部)と嵌合凹部(雌部)を設けて横幅方向の接続が容易にできるようにするという機能上の特性を端的に説明したにとどまるものであって、機能面以外に取引者、需要者の注意を惹く要素があるとは認め難い。

原告の主張が、原告商品の形態の特徴として、右より具体的な前記1の(一)(3)<1>ないし<4>、同(二)(2)認定の点を挙げるものであるとしても、これらの点も、まさに、同所説示の各機能を達成するために選択されたものというべきであって(特にイソバンドについてみると、その形態は、ヘッシュ社が保有し、存続期間が昭和六二年に満了した特許権にかかる発明の解決課題、構成から導かれるものである。右特許発明の特許請求の範囲〔甲第一号証〕には、「二枚の金属板7、7が発泡物質〔発泡硬質ウレタン樹脂〕10によってのみ間隔を保ち金属板の両縁701、702を内側に折曲げ、発泡物質〔発泡硬質ウレタン樹脂〕10に埋込まれた701側が雌、702側が雄の形状とし、側面が紙シート或いはアルミ溶帯8によって縁どられたことを特徴とするサンドイッチ構造の壁部部材」と記載されている。)、商品表示としての性質を認めることはできない。

前記1(四)の原告商品の宣伝広告も、機能面を中心とするものであると考えられ、原告商品の断面図が掲載されていても、それは機能面の解説の補助としての役割が強いものである(例えば、甲第二二号証の1~4には原告商品の断面図が掲載されているが、イソバンドについては、「六大特長」として断熱性、軽量性、長尺性、堅牢性、美麗性、経済性が挙げられている。ここでいう美麗性とは施工した後の外観の美しさを指すものと解される。)。イソバンドのカタログは、イソバンドの嵌合部の図が大きく表紙に掲載され、イソダッハのカタログは、断面が手前に見えるようにしてイソダッハを斜め上から見たところの図が表紙に掲載され、イソバンド、イソダッハ両方のカタログは、断面が手前に見えるようにして、イソバンドについては斜め下から、イソダッハについては斜め上から見たところの図が表紙に掲載されていることをもってしても右認定を左右するに足りない。

そうすると、外装用金属サンドイッチパネルの業界における原告商品のシェアが昭和六一年において九〇%を占めていること、その他前記1の(一)ないし(五)認定の事実を考慮しても、原告商品の形態が原告主張の時期において第二次的に商品表示性(及び周知性)を取得していると認めることはできず、現在においても同様である。甲第三九号証の1~300、第四〇号証の1~200、第四三号証をもってしても、右商品表示性(及び周知性)取得の事実を認めることはできない。

以上によれば、原告の不正競争防止法に基づく差止請求(廃棄・除却請求を含む。)、損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないといわなければならない。

二  争点3(被告商品の形態は原告商品の形態を酷似的に模倣したものであり、その販売につき不法行為が成立するか)

本件において原告が被告の不法行為を理由に損害賠償を求める平成三年以前の期間については、平成五年法律第四七号による改正後の不正競争防止法二条一項三号(商品形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争行為とする規定)の適用はなく(附則三条)、単なる商品形態の模倣は不正競争行為とされず、商品表示性、周知性を取得した商品形態の模倣だけが改正前の不正競争防止法一条一項一号により不正競争行為とされていたことからすると、本件で被告の行為につき不法行為が成立するためには、被告が原告商品の商品形態そのもの(存続期間の満了した特許権にかかる技術ではない。)を模倣して被告商品を製造しただけでなく、被告商品の形態が原告商品の形態に酷似していることを利用して不公正な営業活動を行う等、特段の事情が必要であるというべきである。但し、右形態の酷似により商品主体の誤認混同のあることは必要でない。

1  証拠(各項の冒頭に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば、次の(一)ないし(四)の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

(一) 原告商品の形態と被告商品の形態の対比

(1) 原告商品イソバンドと被告商品サンマリン(甲第五五号証、乙第九、第一二号証)

サンマリンは、原告がイソバンドの形態の特徴であると主張する「二枚の金属板外皮1、2の間に樹脂発泡体である芯材3が充填され、両端に嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成され、右嵌合凸部5と嵌合凹部6は各一個とされている形状の断熱壁パネル」との点のみならず、イソバンドの前記一1(一)(3)の形態をも備えており、寸法的にもほとんど一致している。

サンマリンとイソバンドの相違点は、<1>イソバンドの製品巾W1が九二七mm、働き巾W2が九一〇mmであるのに対し、サンマリンの製品巾W1は九一七mm、働き巾は九〇〇mmである、<2>上側の金属板外皮の表面に三条の浅い溝部が形成されているタイプ(イソバンドのGFタイプ・サンマリンのM型)については、イソバンド(GFタイプ)は、溝部全体の長さ(幅)が七〇mm、深さが三mm、底部が五〇mm、ノリの立ち上がり部分が左右各一〇mmであるのに対し、サンマリン(M型)は、中央の溝部については、溝部全体の長さ(幅)が七〇mm、底部が四〇mm、ノリの立ち上がり部分が左右各一五mmであり、左右の溝部については、溝部全体の長さ(幅)が六〇mm、底部が三〇mm、ノリの立ち上がり部分が左右各一五mmである、という点のみである。

(2) イソダッハとサンホルン(甲第五六号証、乙第九、第一二号証)

サンホルンは、原告がイソダッハの形態の特徴であると主張する「上下二枚の金属板外皮の間に樹脂発泡体である芯材が充填され、上側の金属板外皮には五条の凸脈が形成され凸脈間が谷となり、一端の凸脈の裏側には芯材が充填されていなくて雌部となっており、他端の凸脈の裏側には芯材が充填されて雄部となっている形状の断熱屋根パネル」との点のみならず、イソダッハの前記一1(二)(2)の形態を備えており、寸法的にもほとんど一致している。

サンホルンとイソダッハの相違点は、<1>イソダッハは上側の金属板外皮の凸脈間の谷部が平坦であるのに対し、サンホルンは各谷部に浅い一条の溝部が形成されている、<2>下側の金属板外皮に形成されている浅い溝部が、イソダッハは、一〇条あって各溝部の全体の長さ(幅)が四五mmであるのに対し、サンホルンは、八条あって各溝部の全体の長さ(幅)が六〇mmである、という点のみである。

(二) 被告商品の形態決定の過程における原告との交渉(甲第四一、第五七号証、証人藤井治城)

(1) 原告は、平成元年頃、被告が断熱サンドイッチパネルの分野に参入を図っているとの情報を得て調査していたが、被告側から原告に連絡があり、平成元年七月三日、原告の顧問藤井治城が被告の常務佐々木健二と会ったところ、被告は姫路市に建設中の工場で製造する被告独自の断熱サンドイッチパネルの販売と、被告の関連会社である株式会社淀川製鋼所から委託を受けて断熱サンドイッチパネル(ヨドサンドイッチパネル)の製造をする予定であることが告げられた(なお、以後の交渉の過程では原告が保有する断熱材の製造方法に関する特許権の問題も論議されたが、本件とは直接関係がないので、その経緯は省略する。)。

藤井は、製品の形状について問いただしたが、佐々木常務はあいまいな返答をした。

(2) 同年七月二六日、原告の本社において再度原告と被告の協議がもたれ、被告の佐々木常務外一名から発売予定の断熱サンドイッチパネルの形状の提示があった。原告の藤井外一名及び弁理士は、それらは二ないし三mm寸法が異なるだけで原告商品と全く同一の形状であると指摘した。

(3) 以後原・被告間で何度か交渉がもたれ、同年一二月一日、原告の本社において両社の社長が出席して協議がもたれた。

この席で、被告の社長澤田實は、原告商品のような形態の商品はヨーロッパではポピュラーであって多くのメーカーが製造、販売しており、ドイツのヘネケ社が昨年オランダにヘッシュ社のイソバンド、イソダッハと同じ製品を製造する設備を納入したが何ら問題となっていない、製品は工業所有権によって保護されるものであって、不正競争防止法に抵触するとは考えられない、などと述べた。

これに対し、原告の社長永野辰雄、藤井等は、ヨーロッパで原告商品と同様の形態を有する商品を販売しているのは、いずれもヘッシュ社のライセンシーか下請加工メーカーであること、原告はヘッシュ社に高額な技術援助料を支払い、その後改良を重ね、莫大な費用と労力を費やして原告商品を普及させたこと、断熱サンドイッチパネルの分野への参入はかまわないが、商品形態は変えるべきであること、被告が原告商品と類似する商品を製造、販売しようとしていることは、被告の関連会社である株式会社淀川製鋼所が、被告に委託加工させて販売する断熱サンドイッチパネルの形態の決定について原告の事前の了解を得ると約束し、既に二回交渉をしているのと矛盾することなどを指摘した。

被告の澤田社長は、断熱サンドイッチ壁パネルについては嵌合部をイソバンドと違うものに変更することができるか、断熱サンドイッチ屋根パネルについては上側の金属板外皮の凸脈の数を変更することができるか検討する旨約した。

(4) 同月四日、被告の澤田社長から原告の永野社長に対し、断熱サンドイッチ壁パネルの嵌合部は、イソバンドと同様の形態でないと厚さ二二mmの製品の場合強度に問題があって、変更が困難であるので、原告側で案を提示されたい旨の連絡があったが、永野社長は応じかねると回答した。

(5) 同月二五日の協議において、被告の佐々木常務は、断熱サンドイッチ壁パネルについては、嵌合部形状はそのままにし、上側の金属板外皮の表面に形成される三条の溝部の幅を変え位置をずらすこと、寸法・厚さを少々変更すること、働き巾を九一〇mmから九〇〇mmにすること、断熱サンドイッチ屋根パネルについては、上側金属板外皮の凸脈間の谷部に浅い一条の溝部を形成し、下側金属板外皮に形成されている浅い溝部の幅をイソダッハより数mm広くすることなどを提案した。原告の藤井等は、同月一日の社長間の約束は断熱サンドイッチ壁パネルについては嵌合部の形状を、断熱サンドイッチ屋根パネルについては凸脈の数を変更するというものであったはずであり、被告の案は受け容れられないと述べた。

(6) その後も、両社間で交渉があったが、被告側は、断熱サンドイッチ壁パネルの嵌合部の形状、断熱サンドイッチ屋根パネルの凸脈の数の変更については、検討するとは言ったが約束したわけではないと反論し、結局、交渉は物別れに終わった。

(三) 被告の「サンマリン 納まり例」と題する冊子の図面

被告の「サンマリン 納まり例」と題する冊子(甲第六号証)に一二頁にわたって掲載された合計二八枚の各図面は、それぞれ原告の「イソバンド 設計・施工の手引き」(甲第四号証)の「参考図」の部分に一二頁にわたって掲載された合計二八枚の図面を頁ごとコピーした上、図面中に「イソバンド」と記載された箇所を「サンマリン」と書き替える等、ごくわずかの記載の修正を施しただけのものである(各図面がそれぞれ同一であるだけでなく、各図面の順序・配列の仕方まで同一である。)。

(四) 被告の販売体制(証人長野英穂、同鈴木章夫)

被告において現実に営業に携わっている者は六名である。

(五) 豊田工機株式会社花園工場の事例(甲第四一、第四二号証、第五一号証の1~3、乙第三〇号証、証人藤井治城、証人清水計一)

豊田工機株式会社は、同社東刈谷工場建設に際して断熱サンドイッチ壁パネルとして原告商品イソバンドを採用しており、同社花園工場の建設に際しても、原告の営業担当者が同社及び建設業者の竹中工務店名古屋支店を訪れて営業活動をした結果、平成二年四月、竹中工務店名古屋支店設計部によるイソバンド一二八一m2の設計織込みを得ることに成功したが、その後、被告の関連会社である株式会社淀川製鋼所が竹中工務店名古屋支店購買部に被告商品サンマリンのカタログ・カツトサンプルを持ち込み原告のイソバンドと全く同じ製品であり性能も同じであると説明して、同年一二月、イソバンドに代えてサンマリンを採用させるに至った。この変更について、当時の豊田工機株式会社の資材決定の責任者である今門孝之は全く知らされておらず、設計織込みされた資材が変更されれば通常変更後の資材の名称が記載されるはずの竣工図書にもそのような記載がなかった。

(六) 株式会社池田商店甚目寺倉庫の事例(甲第三七号証の1、第四一、第四二号証、第五八号証の1・2、乙第二九、第三五、第三六号証、証人藤井治城、証人清水計一)

株式会社池田商店は、原告と株式会社淀川製鋼所の共通の取引先であるところ、原告は、株式会社池田商店甚目寺倉庫の壁材約七〇〇m2について、その営業活動により、いったんは原告の特約店の自家使用物件向け特価一m2当たり四五〇〇円で原告商品イソバンド(通常の単価五七〇〇円のもの)の採用の内示に漕ぎ着け、平成二年一〇月三日付鉄鋼新聞で報道されたが、その後参入してきた被告が安値を提示したため、値下げ競争となり、最終的に、平成二年一二月頃被告が受注することになった(但し、右の過程において、株式会社池田商店は、被告を原告と、あるいはサンマリンをイソバンドと混同していたわけではない。)。

2  右1認定の事実に基づき検討するに、断熱サンドイッチパネルの嵌合部を含む形状としては種々のものがありうる(前記一1(七)の(2)ないし(5))にもかかわらず、前記1(一)のとおり、被告商品は嵌合部を含め全体として原告商品と酷似しているばかりでなく、各部の寸法までほとんど同じであること(単に原告商品と同一の機能を実現しようとしたのであれば、寸法までほとんど同じにする必然性はない。もつとも、働き巾については、各社大同小異である〔乙第一三ないし第一五号証〕から、直ちに模倣とは断定できない。)、同(二)のとおり、被告商品販売前の原告との交渉の過程における社長同士の協議において、被告の社長が断熱サンドイッチ壁パネルについては嵌合部をイソバンドと違うものに変更することができるか、断熱屋根パネルについては上側の金属板外皮の凸脈の数を変更することができるか検討する旨約したにもかかわらず、被告は、厚さ二二mmの壁パネルの場合は強度に問題があって嵌合部の形態の変更が困難であると連絡したものの、他の厚さの壁パネルや屋根パネルについては、さしたる理由も示さずに原告からの変更要求を結局拒絶したこと、同(三)のとおり、被告の「サンマリン 納まり例」と題する冊子に一二頁にわたって掲載された合計二八枚の各図面は、それぞれ原告の「イソバンド 設計・施工の手引き」の「参考図」の部分に一二頁にわたって掲載された合計二八枚の図面を頁ごとコピーしたものであることに照らすと、被告は、断熱サンドイッチパネルの分野の後発参入業者であり、同(四)のとおり営業担当者も少ないが故に原告商品の形態を積極的に模倣して被告商品を製造し、圧倒的なシエアを有する原告商品からの受注変更を獲得する等、競争上有利な地位に立つために、原告商品と互換性のある商品であることを利用して安易かつ不公正な方法を採ったものというべきであり、前記1の(五)の豊田工機株式会社花園工場の事例及び同(六)の株式会社池田商店甚目寺倉庫の事例につき不法行為が成立するといわなければならない(確かに断熱サンドイッチパネルは、その取引形態が前記一の1(六)認定のとおりであって、同2説示のとおり、形態ではなく機能に注目して取り引きされるものであり、それ故原告商品の形態に直ちに商品表示性を認めることはできないものの、例えば既に原告商品の設計織込みがされた物件について、受注の変更を狙った営業活動をする場合に、原告商品と実質的に同一の形態で、しかもほとんど同一の寸法を有する製品であれば、ほぼ同一の品質を有するであろうという安心感があり、設計変更も不要と考えられ、他の形態・寸法の製品に比べて、取引者・需要者において資材の変更に応じやすいことが明らかである。)。

右認定に反する乙第三八号証の記載、証人長野英穂及び同鈴木章夫の証言は、いずれも採用することができない。

右1の(五)の事例において、既に設計織込みされていた原告商品イソバンドから被告商品サンマリンへ変更するよう資材発注者の竹中工務店に対し直接の働きかけをしたのが株式会社淀川製鋼所であるとしても、被告は右のような事態を当然想定してサンマリンの製造、販売を行っているものであるから、責任を免れるものではない。

しかし、原告が甲第四一、第四二号証において前記1の(五)及び(六)の事例とともに損害賠償請求の対象として挙げる大豊工業株式会社篠原工場、株式会社ヤマザキマザック美濃加茂工場の事例については、これらの工事の材料につき原告商品イソバンドから被告商品サンマリンに変更されたと認めるに足りる証拠はなく、かえって、証拠(乙第三八ないし第四一号証、第四二号証の1・2、検乙第九号証の1~5、第一〇号証の1・2、証人長野英穂)及び弁論の全趣旨によれば、ここで採用されたのは株式会社淀川製鋼所の製造にかかる「ヨドサンドイッチパネル」であることが認められるから、これらの事例についての原告の損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないといわざるをえない。

三  争点4(被告が損害賠償責任を負う場合に、原告に賠償すべき損害の額)

1  豊田工機株式会社花園工場の事例

原告は、被告の不法行為により豊田工機株式会社花園工場用の原告商品イソバンドの受注を喪失するという損害を被ったものであり、甲第四二号証によれば、同工場用に設計織込みされたイソバンドの単価は「m2当たり六〇〇〇円であり、原告商品の利益率は一〇%であることが認められるから、原告の右受注喪失による損害の額は、七六万八六〇〇円(六〇〇〇×一二八一×〇・一)になることが認められる。

被告は、建築用の断熱サンドイッチパネルは従来から原告、被告以外の業者も日本国内において販売しているから、被告商品の販売額(これに利益率を乗じたもの)が直ちに原告の被った損害の額になるとはいえないと主張するが、前記一1(五)認定のとおり原告商品のシエアは昭和六一年において九〇%を占めているから、特段の事情の認められない本件においては右因果関係を認めるのが相当であるといわねばならない。

2  株式会社池田商店甚目寺倉庫の事例

一方、原告が株式会社池田商店甚目寺倉庫用に原告商品イソバンド採用の内示を受けた価格は一m2当たり四五〇〇円であるところ(特約店自家使用物件向け特価)、イソバンドの通常の利益率は前記のとおり一〇%であるが、それは通常の単価五七〇〇円を前提としており、換言すれば、製造、販売にかかる経費が通常の単価五七〇〇円の九〇%に当たる五一三〇円に達することを意味するから、被告の不法行為がなかったならば原告が利益を得られていたはずであるということはできない。したがって、同倉庫の件で被告が原告に賠償すべき損害は結局存しないということになる。

第五  結論

よって、原告の主位的請求たる不正競争防止法に基づく差止請求(廃棄・除却請求を含む。)及び損害賠償請求を棄却し、予備的請求たる不法行為に基づく損害賠償請求は、前記第四の三1説示の七六万八六〇〇円及びこれに対する不法行為の後の日である平成三年五月一八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で認容し、その余を棄却することとする。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 田中俊次 裁判官本吉弘行は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 水野武)

目録(一)

建築用の断熱壁パネルにして、別紙目録(一)第1、2、3図(a)断面図、別紙目録(一)第1、2、3図(b)斜視図の各表示のとおりの断面、斜視形状を有する形態のものであり、右各図面表示の外皮材1、2には着色亜鉛めっき鋼板、アルミ亜鉛合金めっき鋼板及びその塗装鋼板等が使用され、この上側の外皮材1の表面には、第1図(a)(b)表示のとおり溝部の形成されていないもの、第2図(a)(b)表示のとおり三条の溝部7が形成されているもの、第3図(a)(b)表示のとおり九条の溝部8が形成されているものの三種類のものがあり、上記金属板である上下の外皮材1、2の間には、硬質ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム等の樹脂発泡体である芯材3が充填されてパネル本体4が形成されており、パネル本体4の両端には、別紙第4図に示すように隣接する壁用パネルA同士を嵌合凹部6に貼着されているパッキン9を介在させて嵌合するための嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成されている形態のものであって、断熱壁パネルAの製品巾W1は九二七mm、働き巾W2は九一〇mm、製品厚Tは二二・三五・四五・六〇・一〇〇・一二〇・一五〇mmの七種類、製品の長さは一・八~一五mのもの。

目録(一)

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目録(二)

建築用の断熱屋根パネルにして、別紙目録(二)第1図(a)断面図、別紙目録(二)第1図(b)斜視図の各表示のとおりの形状を有する形態のものであり、右各図面表示の、外皮材1、2は着色亜鉛めっき鋼板、アルミ亜鉛合金めっき鋼板及びその塗装鋼板等が使用された金属板であり、この上側の金属板である外皮材1には五条の凸脈5が形成されて凸脈間が谷部6となっており、谷部6には溝部が形成されておらず、下側の外皮材2には一〇条の溝部12が形成されているものにして、上記金属板である上下の外皮材1、2の間には硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム等の樹脂発泡体である芯材3が充填されてパネル本体4が形成されており、パネル本体4の一端の凸脈5の裏側には芯材3が充填されていなくて雌部7となっており、他端の凸脈5の裏側には芯材3が充填されて雄部8となっており、別紙第2図に示すように隣接する屋根用パネルA同士が、雌部7に貼着されているパッキン9と雄部8に貼着されているパッキン10を介在させて雌部7と雄部8とで嵌合される形態となっているものであって、断熱屋根パネルAの製品巾W1は一、〇六二mm、働き巾W2は一、〇〇〇mm、製品厚T(谷部)は二五・三五・四五mmの三種類、製品の長さは一・八~二〇mのもの。

目録(二)

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目録(三)

建築用の断熱壁パネルにして、別紙目録(三)第1、2、3図(a)断面図、別紙目録(三)第1、2、3図(b)斜視図の各表示のとおりの断面、斜視形状を有する形態のものであり、右各図面表示の外皮材1、2には着色亜鉛めっき鋼板、アルミ亜鉛合金めっき鋼板及びその塗装鋼板等が使用され、この上側の外皮材1の表面には、第1図(a)(b)表示のとおり溝部の形成されていないもの、第2図(a)(b)表示のとおり三条の溝部7が形成されているもの、第3図(a)(b)表示のとおり六条の溝部8が形成されているものの三種類のものがあり、上記金属板である上下の外皮材1、2の間には、硬質ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム等の樹脂発泡体である芯材3が充填されてパネル本体4が形成されており、パネル本体4の両端には、別紙第4図に示すように隣接する壁用パネルA同士を嵌合凹部6に貼着されているパッキン9を介在させて嵌合するための嵌合凸部5と嵌合凹部6が形成されている形態のものであって、断熱壁パネルAの製品巾W1は九二七mm、働き巾W2は九一〇mm、製品厚Tは二二・三五・四五・六〇・一〇〇・一二〇・一五〇mmの七種類、製品の長さは一・八~一五mのもの。

目録(三)

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目録(四)

建築用の断熱屋根パネルにして、別紙目録四第1図(a)断面図、別紙目録四第1図(b)斜視図の各表示のとおりの形状を有する形態のものであり、右各図面表示の、外皮材1、2は着色亜鉛めっき鋼板、アルミ亜鉛合金めっき鋼板及びその塗装鋼板等が使用された金属板であり、この上側の金属板である外皮材1には五条の凸脈5が形成されて凸脈間が谷部6となっており、谷部6には一条の溝部11が形成され、下側の外皮材2には八条の溝部12が形成されているものにして、上記金属板である上下の外皮材1、2の間には硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム等の樹脂発泡体である芯材3が充填されてパネル本体4が形成されており、パネル本体4の一端の凸脈5の裏側には芯材3が充填されていなくて雌部7となっており、他端の凸脈5の裏側には芯材3が充填されて雄部8となっており、別紙第2図に示すように隣接する屋根用パネルA同士が、雌部7に貼着されているパッキン9と雄部8に貼着されているパッキン10を介在させて雌部7と雄部8とで嵌合される形態となっているものであって、断熱屋根パネルAの製品巾W1は一、〇六二mm、働き巾W2は一、〇〇〇mm、製品厚T(谷部)は二五・三五・四五mmの三種類、製品の長さは一・八~二〇mのもの。

目録(四)

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目録(八)の1

被告装置説明書

一、名称

断熱材の製造装置

二、図面の説明

第1図は断熱材の製造装置を示す平面図、第2図は同上の側面図、第3図は同上における下側接続テープ貼付機を示す一部省略斜視図、第4図、第5図及び第6図は同上における発泡剤注入装置を示す斜視図、平面図及び側面図、 第8図、第9図及び第10図は同上におけるダブルコンベアを示す概略側面図、断面図及び一部省略斜視図、第11図は同上の作用を示す断面図、第12図は同上における切断機を示す斜視図、第13図は同上の要部斜視図、第14図は同上における溝切装置を示す一部省略斜視図、第15図(a)(b)は同上の作用を示す概略断面図、第16図は同上により製造した断熱材を示す断面図、第17図は同上の接続を示す断面図、第18図は同上の加工品を示す斜視図、第19図は同上の接続を示す分解斜視図である。

三、主要符号の説明

A 断熱材

B 長尺のパネル

1 上側の金属フープ材

1a 上側の金属板

1c 延出部分

2 下側の金属フープ材

2a 下側の金属板

3 凸脈

4、5 コンベア

6 谷底

7 支持凸部

8 発泡体

8A 発泡性材料

9、10 ペイオフリール

11 凸脈成形機

12 上側端部成形機

13 発泡剤注入装置

15 バックアップベルト

15a プラスチック素板

23 注入装置

23a ノズル

37 切断機

41 雄部

42 雌部

144 上側接続テープ貼付機

44 下側接続テープ貼付機

145 接続テープ

46 溝切装置

47 サイドコンベア

50 凹み

57 丸鋸

77 バンドソー

103 ダブルコンベア

四、製造装置の説明

(一)、9、10はペイオフリールであって、それぞれ金属フープ材1、2が巻かれている。金属フープ材1、2としては着色亜鉛めっき鋼板、アルミ亜鉛合金めっき鋼板及びその塗装鋼板等が採用される。101はピンチロール、102はカッターである。

(二)、144は、上側の一方のペイオフリール9から供給される金属フープ材1の供給が終了した直後に他方のペイオフリール9から金属フープ材1の供給を開始した時に、終了した金属フープ材1の終端と供給を開始した金属フープ材1の始端とを当接させて、金属フープ材1の巾方向全長にわたって長手方向に所定長さの接続テープ145を貼付するための上側接続テープ貼付機であり、当該上側接続テープ貼付機144は所定位置に固定されている。

44は、下側の一方のペイオフリール10から供給される金属フープ材2の供給が終了した直後に他方のペイオフリール10から金属フープ材2の供給を開始した時に、終了した金属フープ材2の終端と供給を開始した金属フープ材2の始端とを当接させて、金属フープ材2の巾方向全長にわたって長手方向に所定長さの接続テープ145を貼付するための下側接続テープ貼付機であり、当該下側接続テープ貼付機44も所定位置に固定されている。

107はアキュムレータであり、上側接続テープ貼付機144が金属フープ材1の端部同士を貼付する間、供給の終了した側の金属フープ材1の進行を停止させないための金属フープ材1の貯留部を構成し、108はループピットであり、下側接続テープ貼付機44が金属フープ材2の端部同士を貼付する間、供給の終了した側の金属フープ材2の進行を停止させないための金属フープ材2の貯留部を構成する。

(三)、11は多数の凸脈成形ロールよりなる凸脈成形機であり、下の金属フープ材2に大きくて背の高い凸脈3を長手方向に連続して成形する。

(四)、12は上側端部成形機であって上の金属フープ材1の端部の成形をする。

(五)、109はプレヒータであり、金属フープ材1、2を予め加熱する。

(六)、13は金属フープ材1、2間に合成樹脂発泡剤のような発泡性材料8A を注入する発泡剤注入装置である。発泡剤注入装置13は、第4図乃至第6図に示すように注入装置23で構成されている。 注入装置23は金属フープ材1、2の進行方向と直交する方向に架け渡されたスライドバー112に油圧シリンダ113によりスライド自在に設置されたノズル23aから構成されたものである。

(七)、この発泡剤注入装置13の後方には上下のコンベア4、5よりなるダブルコンベア103が配置されている。第10図に示すように下側のコンベア5として複数の素板14aからなるクローラベルト14が用いられ、このクローラベルト14の外周に複数のプラスチック素板15aをチエーン15bにより連結して形成したバックアップベルト15がプーリ16を介して架け渡されており、このバックアップベルト15が支持凸部7となっている。

(八)、47はサイドコンベアであり、第9図に示すようにサイドシール材111を介してパッキン43及びサイドシール紙114を押圧して下側の金属フープ材2上に発泡性材料8Aを注入した場合 に発泡性材料が外側方に流出して発泡するのを防止するためのものである。

(九)、ダブルコンベア10の後方には切断機37が配置されており、長尺のパネルBを 所定長の断熱材Aに切り出す。この切断機37は第12図に示すようにパネルの搬送方向に沿って設置したレール73上に車輪74 を介して配した走行台75とこの走行台75上に車輪76 を介してパネルBの搬送方向と直交するパネルBの巾方向に走行自在のバンドソー77とから構成している。走行台75はパネルBの搬送方向に突出しているドライブシャフト179 を具備して、モータ178の回転駆動によってパネルBの搬送方向の往復移動を行う。バンドソー77はパネルBの巾方向に設置した油圧シリンダー180 によって走行台75に対してパネルBの巾方向の往復移動を行う。又、バンドソー77は基台82と無端環状の帯鋸83と三つのプーリー84と一対のホルダー85とかえり取り86とから構成している。プーリー84の回転で駆動させる帯鋸83は一側縁に切断刃が形成されており、上下に相対向する一対のプーリー84間においては一対のホルダー85によって切断刃の向きがパネルBの巾方向となるように90度ひねられる。第13図に示すようにホルダー85はベース87に一対のローラー88を取付けて構成しており、帯鋸83間をはさむ一対のローラー88によって帯鋸83の向きが変えられる。上方のホルダー85は上下伸縮ユニット89 を介して支持されており、90、91は回動装置である。

(一〇)、46は溝切装置であり、第14図に示すように走行駆動モータ51により 断熱材Aの進行方向に走行自在で且つ上下動自在の走行枠53と走行枠53の上に横行駆動モータ54によりラックギヤ55を介して金属フープ材1、2の進行方向に直交する方向に走行自在でモータ56により回転駆動させる丸鋸57とから成る。58はストッパであり、シリンダー59により上下動自在となっており、所定寸法に切断された断熱材Aを停止させて溝切装置46により 上側の金属板1aと発泡体8とを切断し、 第18図に示すような延出部分1cを形成するためのものである。

(一一)、104は搬送コンベア、105ホイスト、106搬出コンベアである。

五、被告製造装置の動作説明

(一)、ペイオフリール9、10から上下の金属フープ材1、2を連続して繰り出し、ペイオフリール9又は10の一方が金属フープ材の供給を終了した時、直ちに他方のペイオフリールが金属フープ材の供給を開始すると共に、供給の終了した金属フープ材と供給を開始した金属フープ材との間に隙間が空いて発泡性材料8Aの注入、発泡時に発泡性材料8Aが当該隙間から外方に流出して発泡するのを防止するため、供給の終了した金属フープ材の終端と供給を開始した金属フープ材の始端とを当接、停止させた状態で据付位置の固定された上側接続テープ貼付機144又は下側接続テープ貼付機44により、金属フープ材の巾方向全長にわたって長手方向に所定長さの接続テープ145を貼付する。この場合、供給が終了した金属フープ材の進行を停止させないため、アキュムレータ107又はループピット108の金属フープ材貯留部に貯留された金属フープ材を随時送り出す。

(二)、次に、上の金属フープ材1の端部を上側端部成形機12で成形し、下の金属フープ材2に凸脈成形機11により五条の凸脈3を長手方向に連続して成形する。

(三)、次いで、上下の金属フープ材1、2の間に設けた注入装置23のノズル23aから下の金属フープ材2の上に発泡性材料8Aを注入する。

(四)、この後、上下の金属フープ材1、2をダブルコンベア103に搬入して金属フープ材1、2を上下のコンベア4、5間を移動させる。この場合、第8図に示すように下側の金属フープ材2の凸脈3の側部の谷底6をコンベア5の外周に架け渡したバックアップベルトである支持凸部7により支持させる。もちろん、金属フープ材2の厚みが大きい場合とか凸脈3の背が低い場合などには支持凸部7による支持をしなくてもよい。上下の金属フープ材1、2がコンベア4、5間を移動する間に第11図に示すように、上下の金属フープ材1、2間に注入した発泡性材料8Aが発泡する。

(五)、この後、長尺のパネルBを、切断機37により所定の長さに 切断し、第16図に示すように上下の金属板1a、2a間に発泡体8が充填された断熱材Aを得る。

この断熱材Aは一端の凸脈3の裏側には発泡体8が充填されて雄部41となり、他端の凸脈3の裏面には発泡体8が充填されておらず雌部42となっている。

(六)、次いで、この断熱材Aをコンベア104により搬送して、必要がある場合は、断熱材Aの端部に所定長さの延出部分を設けるために、溝切装置46により断熱材Aの端部から延出部分の所定の長さだけ内側の 位置で上側の金属フープ材1及びこれに固着する発泡体8を切断し、延出部分の金属フープ材と発泡体とを剥離するための切込み部を備えた断熱材Aを製造する。

(七)、この断熱材Aは、屋根材、壁材等として使用されるが、例えば、屋根材としては、第19図に示すようにその長手方向を屋根勾配に合致させ、長手方向の前後両端を接続して配置し、上段の断熱材Aの延出部分1cと下段の断熱材Aとを貫通するボルトによって連結する。又、断熱材Aの巾方向の接続は、第17図に示すようにパッキン43を介して雄部41に雌部42を嵌合して接続される。

第1図

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第2図

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第1図

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第2図

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第3図

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第4図

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第5図

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第6図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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第13図

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第14図

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第15図

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第16図

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第17図

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第18図

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第19図

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